023.食らう ページ24
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麻生
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牛乳とスポーツドリンクを買って教室に戻ると、杉本の話し声が聞こえて扉のところに立ち止まる。
覗けば、杉本と出張帰りらしい監督が教室の中に2人きりで、杉本は俺に見せたこともないような幸せそうな顔でほんのり顔を赤くして監督を見つめて居て。
その顔が想像以上に俺の胸んとこをぐぐぐっと握りつぶした。
(…乙女か俺は)
ふわふわと花を飛ばしながら嬉しそうにしている杉本をぼーっと眺めると、ため息をつきながら教室のドアのところにもたれかかった。
タイミングがいいのか悪いのか、どーんと花火が上がる音がして、ドアの隙間からふわっと花火の光が漏れ出て来た。
「わ、監督!上がりましたよ!」
「三年目なのにそんなにはしゃぐか?普通」
きゃっきゃとはしゃぐ杉本の声と呆れたような監督の声をを背中で受ける。
「花火にはしゃいでるというか」
「…」
「監督と見れてるこの状況にはしゃいでます」
予想通りの杉本の答えが遣る瀬無くて、
そんなこと言われてる監督が心底羨ましくて、
今まで必死で弱火に抑えて来たのに嫉妬で胸の奥のとこが焦げそうだ。
俺はため息をつきながら扉伝いにずるずるとしゃがみこむと、女々しくごつんと自分の膝に自分のおでこをぶつけた。
(…あーこれ、割と食らってる)
ダメージってやつ。
何かが起こるなんて一ミリも一ミクロも思ってなかったけど、これから杉本と2人で花火見られるってだけで浮き足立ってた俺には、
この状況がクリティカルヒットだ。
ゲームで言ったら戦闘不能だ。
(…俺って、もしかして、割とガチで、杉本のこと好き?)
頭を抱えてそんなことを思うと「…いや、無理ゲーだろ!!!」と心の中で自分を自分でひっぱたく。
高嶺の花とは言わない。
人懐っこい犬だ。すぐ尻尾振って何処かに行ってしまう。
もう一つため息をついたところで、ポケットの携帯がブルブル震える。見れば「御幸」と表示されていて、とりあえず通話ボタンを押した。
『あ、出た』
「……んだよ、いきなり。御幸」
『や、杉本と2人で見てるとか聞いたから、どーなってんのかなーと思って』
電話口でいつものようにケタケタ笑っている御幸に気張っていた気持ちが緩む。
「御幸」
『ん?』
「………今からそっち行っていいか」
『は』
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ジェシー - 続きが読みたいです、、!!作者様もし見ていらっしゃったら是非続きを書いていただきたいです!!!! (2020年6月19日 3時) (レス) id: 8f8c74e36c (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか? (2020年3月28日 2時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
空 - 今更だけど続き読みたいですッ!! (2019年3月13日 1時) (レス) id: e5333279ca (このIDを非表示/違反報告)
帰蝶(プロフ) - 更新はもうしないのでしょうか?していただけるならその日を楽しみに待ってます!!!頑張ってくださいね♪応援しています!!! (2017年4月12日 16時) (レス) id: 07fa8ea693 (このIDを非表示/違反報告)
夏乃実(プロフ) - ちかちゃーん(T_T)いきなり御幸世代終わっちゃってたから心臓止まった…私も考えたくないから多分書けないな(^^;; 麻生が切ないです。。 (2016年12月5日 3時) (レス) id: 753635ea11 (このIDを非表示/違反報告)
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