021.刺さる ページ22
.
麻生
.
「麻生ー行かねーの?グラウンドでみんな花火見るって……」
「ええんやて!麻生は!」
ある程度片付けられた教室で、机の上に座ってぼんやり外を眺めていると、クラスの奴らが花火を見に誘うために俺を呼ぶけど、
ゾノが変な気を回して「ほら、行くで!」と他の奴らを教室から追い出すように急かした。
俺1人が取り残された教室でゆっくり紫になって行く空を眺めていると、がらっとドアの開く音がした。
「よっ」
「……よ」
振り返れば、ひらっと軽く手を上げて教室のドアのとこに立っている杉本。
俺もつられて軽く手を振ると、杉本は「ここから花火見えんのー?」と楽しそうに俺の隣に駆け寄ってきた。
「あ、割と眺めがいい」
「…」
「…麻生?」
ぽけーっと杉本を見ていると、視線に気がついたようにきょとんとこちらを見上げてくる。
途端にぐわっと心臓の動きが早くなって「…あの衣装着替えたんだな」と顔をそらしながらうるせぇ胸のとこを抑えるようにぐっと拳で押した。
「うん。御幸と並んで写真撮って見納めにしてきた」
「ふーん…」
「倉持なんて、執事姿の御幸とひらひらのメイド服の私見て『そろそろルックス詐欺で訴えてぇ』とかマジ顔で言うからさぁ」
「ひどくない?」と爆笑している杉本。
別に杉本の口から他の男の名前が出てきたくらいで妬くほど、俺はチープな男じゃない。それに、そんなことで妬いてたら多分俺は今、もうまっくろこげだ。
「麻生ー」
「…あ?」
「後夜祭、誘ってくれてありがとね」
「……俺が誘わなくても、一緒にいる相手なんて大勢いんじゃんお前」
「かっわいくないなぁ〜」
「俺は可愛さは狙ってない」
杉本は「バカ」と笑うと、俺の隣の机の上に「よいしょ」と腰掛けた。
「まぁ、ぼっちではなかっただろうけどさ、
麻生が私のこと気にして、声かけてくれたのが嬉しいの!」
「………お前はまたそういう………」
「あ、刺さった?刺さりました?」
「…刺さるに決まってんだろ」
狙わずに、こういう男心にピンポイントで刺さってくるようなことを言ってくるのがズリィ。
素直にも熱くなってしまう頬を隠すように杉本の頭を小突く。
期待しねぇって。
わかってるわかってる。のぞまねーってこれ以上。
杉本の中で俺は「監督」「B組」「ノリ」以外の「その他大勢」だ。
わかってんのに、杉本と話してるとやっぱり、期待してしまう。
.
591人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ジェシー - 続きが読みたいです、、!!作者様もし見ていらっしゃったら是非続きを書いていただきたいです!!!! (2020年6月19日 3時) (レス) id: 8f8c74e36c (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか? (2020年3月28日 2時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
空 - 今更だけど続き読みたいですッ!! (2019年3月13日 1時) (レス) id: e5333279ca (このIDを非表示/違反報告)
帰蝶(プロフ) - 更新はもうしないのでしょうか?していただけるならその日を楽しみに待ってます!!!頑張ってくださいね♪応援しています!!! (2017年4月12日 16時) (レス) id: 07fa8ea693 (このIDを非表示/違反報告)
夏乃実(プロフ) - ちかちゃーん(T_T)いきなり御幸世代終わっちゃってたから心臓止まった…私も考えたくないから多分書けないな(^^;; 麻生が切ないです。。 (2016年12月5日 3時) (レス) id: 753635ea11 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ