012.誘う ページ13
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去年まで俺もやっていた地獄の合宿。
暑い中駆け回る後輩たちを呑気に眺めていると、どたばた走ってくる音がしてそちらを見れば、
出来の悪い後輩マネが急いでかけてきていた。
「亮介さん!お待たせしました!」
「おそ」
「こ、これでも急いだんですけど!」
いつも通りキャンキャン喚く杉本に、
ぽんぽんとベンチの横を叩けば「失礼します」と隣に座った。
ポカリを渡してやると、「ありがとうございます!」と感激したようにごくごくと飲んだ。
「何ですか?話って」
「フラれたらしいじゃん、監督に」
「ごほっ!」
俺が言ってやれば、杉本はポカリで咳き込みながら「な、なぜ、それを」と俺を見つめる。
「風の噂で」と誤魔化す。
ほんとのとこは、フラれたことを本人から聞いた梅本が藤原に言って、それが俺に伝わってきたわけなんだけど。
藤原の話的に、今まで2年間フられてきたのとは違う感じだったから、後輩への差し入れついでに茶々を入れてやろうと思ってやってきた。
「…フられたというか、タイミングに恵まれなったといいますか」
「…お前がタイミングに恵まれたことなんてあったっけ?」
「ありませんけどぉ!」
杉本は俺を見て少し口を尖らせると、ポカリのボトルをぱこぱこしながら呟いた。
「三年目は少しは近づけるかなって、思ってたんですよね」
「…自分を買いかぶりすぎ」
「あはは、その通りで」
苦笑いしながら頭をかく杉本に俺は「笑い事じゃないでしょ」とため息をつくと、「俺が回ってやろうか」とベンチの背もたれにすとんと背中をつけて横目で彼女を見る。
杉本はきょとんとした顔で俺を見ると、
ぱあっと嬉しそうな顔になり、
そしてすぐに訝しげに眉間にしわを寄せる。
ほんとコロコロ表情が変わって、見ていて飽きないなこいつ。
「……何か裏がありそうな気が……」
「人の厚意が素直に受け取れなくなったらおわりだね。それじゃあぼっちで文化祭楽しんで」
「ちょちょちょちょ!」
簡単に引き下がる俺に杉本は慌てて腕を掴むと「回りましょう!回りますとも!」と大きく頷く。
「じゃ、他の奴にも声かけとくね」
「了解です!」
杉本は大きく頷くと、ペットボトルを両手で持ちながら嬉しそうに笑った。
「……励ましてくれて、ありがとうございます、亮介さん」
「……」
「生意気」とニヤニヤ嬉しそうな杉本の頭にチョップを落とした。
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ジェシー - 続きが読みたいです、、!!作者様もし見ていらっしゃったら是非続きを書いていただきたいです!!!! (2020年6月19日 3時) (レス) id: 8f8c74e36c (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか? (2020年3月28日 2時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
空 - 今更だけど続き読みたいですッ!! (2019年3月13日 1時) (レス) id: e5333279ca (このIDを非表示/違反報告)
帰蝶(プロフ) - 更新はもうしないのでしょうか?していただけるならその日を楽しみに待ってます!!!頑張ってくださいね♪応援しています!!! (2017年4月12日 16時) (レス) id: 07fa8ea693 (このIDを非表示/違反報告)
夏乃実(プロフ) - ちかちゃーん(T_T)いきなり御幸世代終わっちゃってたから心臓止まった…私も考えたくないから多分書けないな(^^;; 麻生が切ないです。。 (2016年12月5日 3時) (レス) id: 753635ea11 (このIDを非表示/違反報告)
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