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石「ごめんて、本当に」
日本を発つ際に仕掛けたサプライズの仕返しのつもりだったらしい。
石「びっくりした。スタメンでセッターって」
「セッター代理だからスタメンだったの。スパイカーだったら、まだそこまでじゃない」
石「代理か、良かった」
本当にセッターになるのかと思ったと笑う。
石「スパイカーでいてもらわないと困る。一番の理解者だと思ってるから」
改めて彼と目が合った。そうだ、言いたいことがあるはずだ。
「......優勝おめ」
石「待って!Aさんはまだ言わないで」
私の言葉を遮って、眉を下げて笑った。
石「俺はまだ何もやり遂げてないよ」
スタメンで出れなかった試合の方が多い。
決して自分の実力での優勝ではないからと。
石「今言われたらダメになる。今だってAさんのプレー見てスイッチ入れられたのに」
「でも、通用するって感じたでしょ?私も......もちろんまだ実力不足だけど」
石「うん」
今お互いが何かを掴みかけている、それを彼も分かっている。一番の理解者、だからこそ。
その後チームメイトに捕まり質問攻めに合う。
祐希がイタリアでプレーしていること、日本代表の同志だということを紹介する。
それを聞いたメンバーは何故か残念そうに、でも次の瞬間には顔を緩ませた。
『日本人がこんなに大胆だとは思わなかったわ』
石「なんだって?」
「公衆の面前で抱き寄せる大胆な日本人がいるなんて、だって。イタリアでお勉強してきたのね」
石「違っ!ノー!あれは勢いで!伝えてよ!」
「恥ずかしいから嫌」
明日のニュースが楽しみだわと言いながらチームメイトは帰っていった。
『ほらA!せっかくユーキが来てくれたんだからこれ使って』
「え、これ」
『次の練習で返せば大丈夫よ』
エマに渡されたのはチームの公用車のキーだった。
石「運転できるの?」
「国際免許、一応とってきたから。実際に運転するのはあんまりないけど......でも、どこ行くの」
石「帰ろっか、Aさん疲れてるし」
「へ、あ、うん。じゃあ送るよ」
なんだもう帰るのか、ちょっと残念......ん、残念?
石「どこに?違うよ、Aさんち」
「......」
『どうしたの?』
エマが私に話しかけるが私はそれに気づかないほど酷く混乱していた。反応がないから祐希に聞いて、祐希は何とかして答えていた。
『A、何か問題があるの?』
「何かって......え、泊まる気?」
『泊まらせてあげなさいよ』
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夏実(プロフ) - 実在する人物を題材としているのでオリジナルフラグを外しましょう (2019年11月10日 4時) (レス) id: caffb068cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:松野 | 作成日時:2019年11月10日 2時