Flowerwall (ページ32)

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石川祐希調子どう?

帰宅後はその一言に返す言葉を選んでいた。
調子は悪いよ。そりゃもう。

ターニャに連れ出されていなかったら、私は祐希に弱音を吐いたかもしれない。
でも違う。強がりとかでも、誤魔化しとも違う。

A強くなってるよ

これで良かっただろうかと思ってしまう。

石川祐希じゃあ大丈夫。

理解してもらえたかどうかはわからない。

Aそっちはどうなの?

石川祐希俺も、強くなるよ

"ーーカット乱れた！セッター・ハナイがボールを追う！流れるようなジャンプトスから...決まったぁぁ！ターニャ・サルダーリのスパイクがブロックの上から突き刺さりました！"

"ボールがネットに近い！この踏み切りは...セッター自らスパイク！味方のピンチをハナイが救った！"

"さぁ、ハナイは誰を使う！？バックアタック決まったぁぁぁ！スリードレヒト、勝利！この地でセッターデビューのハナイ！司令塔としてしっかり役目を果たしました！"

セッター不在の二戦を無事勝利で収めることができた。自分でも信じられないほど劇的な試合だった。
生まれて初めてのヒーローインタビューに嫌々引っ張り出された私。
終わってチームメイトのもとに戻れば揉みくちゃにされた。

『今日のA、気迫が違ったわね』

『溜めてたフラストレーション、サーブで一気に出したでしょ？あれ鳥肌立っちゃった』

それもそのはず。
祐希が所属するモデナがイタリア杯で優勝したからだ。

負けられなかった。
素直に嬉しい、にも関わらず悔しい。
彼のチームが奮い立たせてくれた。
前に取材で「ライバル」だと言ったことを思い出す。
超えたい。この時そう自覚した。

『A！写真撮って！あのサーブでもう君のファンになったよ！ほらサインも！』

少しずつ知名度が上がってきたのか、試合後にファンから声をかけてもらえることも増えてきた。

ハイタッチをしながら歩いていると、思わぬファンの出現に足を止めた。見上げる程の位置にある顔を見て驚愕した。

「おめでとう」

「は、なんで...」

「待てなくて来ちゃった」

そのまま抱き寄せられて、チームメイトの悲鳴がまるで遠くに聞こえる。

『A！一体誰！？その男は！？』

「......えぇ！？」

石「はは、驚きすぎ！」

ファンならぬ、ライバル兼超えたい壁が笑う。
声にならない叫びがしっかりメディアに撮られていたことを私は知る由もない。

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