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「いまのうちに……」
すると、こそこそと動く大きな影が視界の隅に映る。
しかし、それを逃すスノウとホワイトではない。
「こら、ブラッドリー!」
「見つかった!……ぐえっ」
泥棒の如くコソコソと逃げようとして双子に捕まった男はブラッドリーだ。
彼は元盗賊団のボスであり、今では囚人である。
賢者の魔法使いとして牢から一時的に出てはいるが、スノウとホワイトがお目付け役としてそばにいるらしいので、好き勝手に動くことは出来なくなっている。
「オズ」
牢に戻されかけているブラッドリーとスノウとホワイトのわちゃわちゃとした和やかな光景を眺めていると、ふとAの視界は揺れた。
どうやらじっとしていたミスラが動き出したらしい。
彼の視線の先には、オズがいた。
「世界最強の魔法使いを名乗りながら今回の<大いなる厄災>の前では、あなたも赤子同然でしたね」
「…………。私が名乗った訳では無い」
「いつか、俺があなたを滅ぼして、世界で最も強い魔法使いを名乗ります。覚悟してください」
ミスラは宣戦布告といえる言葉をオズに向ける。
数々の逸話を残す最強の魔法使いにそんな大口を叩けるのは、この世界でも僅か少数だろう。
それほどまでに、ミスラは自分の力を誇示している。
「お前が役目に選ばれた者でなければ、今、殺していた」
「……」
「ヒエッ」
魔法使いって何故こんなにも物騒な思考と言動が目立つのだろう。
Aはそんなことを心の中でぼやくが、それは彼女の周りにいる魔法使いが北の国出身であることが起因しているからだろう。
「立ち去れ」
「いずれ、また」
ミスラはそう言葉を残すと、その場を去ろうとする。
Aは慌てて背後を振り返り、小さくなっていくオズと双子、ブラッドリーを視界に映した。
「今年もありがとう!ファウストのことお願いします!」
小さな手をぶんぶんと振る。
本当はファウストの事は凄く気がかりだけど。
久々に顔を合わせた彼らに言いたいことはまだあったけど。
それらを飲み込んで、Aは手を振る。
「Aは本当にいい子じゃのう」
背後にいた彼らの顔が、ほんの少しだけ優しく緩められたような気がした。
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あいねこ - 最高です。キャラクターとの関係性が素敵すぎます!素敵なお話をありがとうございます。更新楽しみにしております。 (2021年4月19日 2時) (レス) id: 650a36dc0f (このIDを非表示/違反報告)
藤李 - ぬいぐるみが主人公とは珍しいですね!とっても面白かったです!続き待ってます!o(*゚∀゚*)o (2020年4月14日 19時) (レス) id: b71c5bc041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星子 | 作成日時:2020年2月29日 2時