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智がずっと、多分、ずっと好きだった。
智以上の人なんて現れなかった。
最初は、智しか友達がいないからだと思っていた。
友達がいないから、智と離れたくなくて、
それが強すぎて、
好きと見間違えたんだって思ってた。
違うな、って思ったのは、
智が高校卒業してすぐ、第二ボタンをおれにくれた時だ。
「え、なんで」
「え?だって、欲しかったんだろ?」
なんで欲しいのかよく分かんねぇけど
って不思議がりながら、金色に輝くそれをおれに渡す。
「欲しいって、、一言も」
「あのなあ、おいらがどれだけかずのこと見てきたと思ってんの?」
お前は自分が欲しいもの絶対素直に言わないけど、欲しいものをじっとみる癖があんだろ?
おれはもうずっと、そのボタンを見ていたらしい。
「ボタンだぜ?ただの」
「……ちがうよ」
ちがわない。
これ自体はただのボタン。
少しくすんでて、洗濯機でできた傷がある。
智が通ってた高校の、校章が彫られてる。
これをさ、くれたことに意味があるの。
おれがずっとみてることにさ、気づいてくれたことに意味があるの。
でも、おれがみてたのはボタンじゃない。
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作者名:楽斗 | 作成日時:2023年3月4日 11時