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「かず!」
肩を叩かれて、目を覚ます。
あのまま泣き疲れて眠ってしまったみたいで、目を開ける前に、喉が痛くて、咳をする。
だから、かずっておれを呼んだ声が、母さんなのか、違う人なのか、分かんなくて、
そう、手だ。
あいつの手は、顔に似合わずおっきかったから。
「…………………あんたなんでここにいんの」
「おまえがすぐ帰ったからじゃん」
さっき、会ったときのまんまの服着た…日が変わってないから当たり前なんだけど、智がムスッと拗ねた顔してる。
窓を見ると、日がどっぷり暮れていた。
「…新幹線で…帰ってきたの?」
「はー?貧乏学生なめんなよ?でもバスだと次の日になっちゃうから普通電車だよ。3週間分の食費だよ〜おまえなあ」
頭をガシガシかいて、智がおれを睨む。
痩せてるから、鋭くて
おれはなんかそれだけで少し辛い。のに、
昔みたいに、ふにゃって笑って、照れくさそうに。
「全員に、ごめんって言ってきた。もう会わないって」
「会わ?」
「大事にしてるやつが、嫌だって言ってるからって」
智は、こういうところがある。
「…おま、ばかじゃん。何その言い方、それだと彼女みたいじゃん」
「ん、なんか、彼女いないって言ってたじゃん!てビンタされた」
ほら、ここって、ほっぺた出してきて、軽く触れる。
熱かった。
「あはは、色男じゃん」
「色?焼けてるから?」
智は、こういうところがある。
「そうだよ」
焼けてるからだよ、美大生のくせにさ。
なんていうと、智がヘンケンだ〜て言う。
偏見という言葉を知らない人のイントネーションだった。
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作者名:楽斗 | 作成日時:2023年3月4日 11時