可惜夜[気象ON] (ページ1)

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｢明日…さ、朝日でも見に行こうか｣

宿に到着したばかりなのに、窓の外から海を見てる智に声をかける。

おれの声なんて聞こえてないのかな、と思って、肩をとんとんって叩くと、やっとこっち振り向いたからほっぺに人差し指をぶすっと指す。

｢ね、聞こえた？｣

人差し指が刺さったままにこやかに話しかけてやると、智はふるふると首を横に振ったから、｢あした、あさひ、みにいこ｣って言ってやると、こくんと頷いた。

｢朝起きれる？｣

(こくん)

｢とかいって、おれが起こしてやんないとあんた起きないでしょ｣

(こくん)

ふにゃって笑う。
困ったみたいな、照れたみたいな、
小さい子が、甘えるような笑顔。

｢てか、喋んなさいよ｣

指してた指を、広げて、頬を撫でる。
少しだけ冷たい。

｢…ふふ。かずの声が気持ちよくて｣

それに甘えるように、首を傾げて、
智が目を瞑る。

まつ毛が少し揺れていた。

＜可惜夜＞