翼だけが知っている (ページ14)

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ホームルームが終わり、少人数教室に急ぐ。

担任の話が長く、五分もオーバーしてしまっていた。

「ごめん。遅くなった」

佐田は俺を一睨みすると、口を開いた。

「さてツバサ。全部話してもらおうか」

圧に押されながら、仕方なく俺は転校する事、今日の出来事を吐いた。

十分程話し続けていたが、佐田は一口も挟まず、これまでに無いくらい真剣な表情をしていた。

「…そうなのか」

俺が全部話し終わった後の、佐田の一声目がこれだった。

「誰にも言わないでよ」

ふと泣きそうになり、視線を窓に向ける。

夕暮れの赤い光が窓から差し込んでいた。

アーヤ曰く、茜色というらしい。

「言うわけないじゃん」

しばらくして濁った声が聴こえる。

びっくりして目を向けると、佐田は涙を流していた。

「ごめん。余計な事聞いてしまったよね」

その口からは聞いたことない謝罪の言葉に、二重で驚く。

「そんな事無いよ。俺も聞いてくれて嬉しかった。ありがとう」

涙が出そうなのを誤魔化して満円の笑みを作る。

その瞬間、佐田の顔が赤くなった。

「…やっぱり、ツバサって魅力的だよね」

予想外の言葉に涙が引っ込む。

「私、実は一年の時ツバサの事好きだったんだよ」

えっ。

「叶いようが無いけど後悔したくないから、ずっと伝えたかったんだ」

「…でも私、振られたじゃん」

自嘲する様に語る佐田。

その説には俺にも非があり、慌てて頭を下げる。

「俺、あの時、酷い事したと思ってる。ごめん」

佐田は首を左右に振った。

「もういいよ。私も叩いてごめん」

「彩に聞いたんだ。あの後､お前泣いてたって」

「アーヤ、やっぱり話したんだ」

笑いながらふとある事に気付いた。

「じゃ、もう俺行くから」

俺は別れを告げ、教室を出た。