Urt ページ13
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まだ寒暖差のあるこの季節、Aと海へ来た。
高校に入るまではずっと一緒だったAから連絡が来たのだ。「○日に海へ行こう」ただそれだけ。電車に揺られている間も沈黙が続いていた。長い間一緒に居たからこそなんだろう、苦痛に感じる沈黙ではなかった。
長く続く砂浜を淡々と歩いていくAと何歩か後ろからその後ろ姿を見守る俺。急に足を止め振り返ったAに驚く。
中学生まで見ていた可愛らしい少女のAではなく大人に近付いた可憐な女性と形容するのが正しい気がした。高校は別々だったからこうしてしっかり顔を見ると時の流れを感じたと同時に、改めて好きだと思う。
小さい頃からずっと好きだった、高校も同じところだと思っていたから想いを伝えなかったことを酷く後悔してきたのだ。
一歩一歩距離を狭めてくる俺にAは少し驚いた様子を見せる。彼女は逃げること無く俺に抱き締められた。
「…A」
「何、うらた」
「好き、小さい頃からずっと好きだった。愛してる」
「…そう」
「そうだよ」
「…帰ろっか、うらた」
は?と声に出してしまいそうになるのを抑える。Aは優しく俺の腕を解き、来た道を辿っていく。どうして、俺の気持ちは届かなかったのだろうか。それを問いただすような真似は俺には出来なくて、また数歩離れたところからAの後ろ姿を追った。
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「…ごめんね、うらた」
どんなに彼のことが好きでも持病のある私に縛り付ける様なことはしたくなかったの。なんて言えば優しい彼はきっとそんな事ないって言うだろうから、狡い私は有耶無耶にするの。
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mi(まい)(プロフ) - 林です。嘘です。さん» 切ないお話を書きなれてないのでそう言って貰えて凄く嬉しいです、ありがとうございます( ;_; )! (2020年5月26日 17時) (レス) id: 0f8661bfd1 (このIDを非表示/違反報告)
林です。嘘です。 - 3番目の切ない感じが好きです! バッドエンドとかが少し好きなので、私の好みでグッときました。 (2020年5月25日 2時) (レス) id: aa4022e14b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mi(まい) | 作者ホームページ:http://twitter.com/muikrn
作成日時:2020年5月23日 3時