20話 ページ20
「A、かすみばし…………む、む……むい、さん、は、帰った?」
柱である無一郎はアオイの上官に当たる人物。
そんな彼のことを“むいさん”と呼ぶのにはものすごい抵抗があったものの、こればかりは仕方がない。
それにここでアオイが“霞柱様”と言ってしまう方が彼にとっても不都合。これは仕方がないことなのだ。
「うん、帰ったよ。」
Aは薬棚の整理をしていた手を一旦止めてアオイに振り返る。
その表情はどこか寂しげなものだった。
「…むいちゃんがね、蝶屋敷に来るの、嬉しいけど嬉しくないの。」
年相応の、どこか不貞腐れるような顔をしてAはアオイの隊服の裾を引っ張った。
アオイは可愛い妹の頭を優しく撫でる。
「むいちゃんに会えるのはすごく嬉しいけど…。
でも、蝶屋敷に来るってこと怪我してるってことでしょう?
むいちゃんが怪我するの、私、やだな…。」
アオイの隊服の裾を握る力を強めて、声を押し殺すようにそう言った。
妹の頭をぽんぽんと撫でてやると、Aはアオイの胸元に顔を押し当て、何かを堪えるようにした。
「……Aは、あの子のことが大切?」
アオイの問い掛けに、Aはこくりと頷いた。
「……そう。
…でもそれって、素敵なことなのよ。誰かを大切に思えるのは。」
アオイはそれ以上何かを言うこともなく、Aの髪を優しく梳いてやった。
__“むいちゃん”という女の子が本当は男の子だと知ったら、この子はどんな反応をするんだろう…。
アオイの中でふつふつと湧き上がってきた疑問は喉元まで出かけた。けれどそれをぐっと飲み込み、“むいちゃん”という女の子を肯定するように、最愛の妹を安心させるようにAの身体を抱き締めた。
935人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ピクルス - 号泣 (2020年9月9日 14時) (レス) id: 2a7c012e78 (このIDを非表示/違反報告)
ピクルス - うわぁぁぁぁぁぁぁあん!無一郎くん死なないでぇぇぁえぇぇぇぁあぇぁあええ (2020年9月9日 14時) (レス) id: 2a7c012e78 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - わたぬきくん。さん» お祝いのお言葉ありがとうございます!そのように言って頂けて嬉しい限りでございます!最後までお付き合いくださりありがとうございました! (2020年8月30日 10時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
わたぬきくん。(プロフ) - テスト期間終わってきたら完結してた…ああもう号泣です!完結おめでとうございます!(泣) (2020年8月29日 14時) (レス) id: 9e97a6dad3 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - リムさん» お祝いのお言葉と応援のお言葉ありがとうございます!そのように言って頂けて光栄の極みでございます…!本当に感謝の限りです。最後までお付き合いくださりありがとうございました! (2020年8月27日 0時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白霞 | 作成日時:2020年7月23日 20時