【完結】約束4(ワタナベマホト)

その後２(ポキさん編) ページ8

そして病院を出て、すぐの所
荷物を両手に持ってこっちに歩いてきているはじめさんと会った

俺に気付いて、彼は困ったような複雑な表情を浮かべて手をあげる
だから俺も足をとめて軽く頭を下げた


「Aちゃん、意識戻ってましたよ」


挨拶もそこそこに、彼が何かを言い出す前に伝えた

その事実に驚いて目を開いた
そしてほっとしたような顔は愛しむような優しい表情で
あぁ、大切に想思っているんだな…なんてぼんやり思った

恐らくはじめさんはそのままAちゃんの所に行きたいだろうその足をぐっと堪えて


「ちょっと、話さない？」


笑顔で、そう提案してきた



病院の敷地内にあるベンチ
比較的時間の流れがゆっくりとしているその広場は、主にここに入院をしている人がチラホラいて
男2人でひとつのベンチ
その様子は少し異質だったけど、人の少なさは俺にとっては心地よかった


「あのさ」


ぽつり
はじめさんから話し始めた

その話づらそうに口ごもる姿は大体の…いや、全部知っているとでも言うかのようなそんな様子

何となく、悟る
これから何を話すんだろうって
そんな内容
まぁ、間違いなくあまり気分のいい話ではな事はわかる

だから


「はじめさんは知ってるんですね」

「…」


俺とAちゃんのことも
そして今の病室
マホトさんのことも

至って冷静に、淡々と
話し始めた彼を制すように聞いた俺にはじめさんはこっちを見ながら押し黙る

反対に俺は彼の顔を見る事が出来ずに
特に何を見る訳でもなくぼやっとした視線で宙を見つめていた

まぁそれだけでもわかるけどさ
沈黙なんて、肯定じゃん


「…ポキくんも気付いてたんだよね」


あの2人の気持ちに

その言葉に含まれているのは、多少の非難
だけどその通りで
わかっていた

2人が想い合っている事も
うまくいかずにすれ違っている事も


「気付いてましたよ」


それでも


「マホトさんがAちゃんを傷つけるなら、」


俺の方が幸せにできる
そう思った

そのままを告げる
するとはじめさんは俺のそんな言葉に少し笑って


「かっこいいねぇ〜」

「いや、かっこ悪いでしょ」


あがいてみたものの、結果はこれ

最初から決まっていた事の様に
あの2人がこうなる物語になっていた
俺はそれを盛り上げるための駒のひとつ

見事に踊らされて、散った
そういう事

そう言って俺も眉を下げながら笑う


「俺はさぁ、ポキ君に謝らないといけないんだよね」

「…」


多少の緊張を醸し出しながら
はじめさんは、決意したかのようにそう呟いた

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