傷ー太宰治 ページ33
※自傷行為が含まれる文章があります。苦手な方はお戻り下さい。
「・・・。」
人は怪我をすると、どんな反応をするのだろう。
私は怪我をしても痛いとも何にも言わない。それが血が出る怪我ならば治療する時はするけれど、打撲だったりの怪我は放置する。
痛いけれど、泣くほど痛い訳じゃない。それに傷なんてほとんど放置だ。
自分の指から血が出ていて、絆創膏を貼るのも面倒で舐めて終わらせた。
「優希ちゃん」
「太宰さん」
「また指に怪我をしたのかい?」
「・・・すみません。」
ただ放置出来るのは自室だけだ。仕事場や外ではちゃんと治療をしないと周りがあれこれ言ってくる。
本当は心配してくれる皆を見ているのが好きなのだ。私はまだ必要なんだと、心配してくれるんだと、そう安心出来るのだ。
性格悪いと思うなら思っても構わない。今までそう思ってきたのだから。
「おいで、手当てをしてあげよう。」
手を伸ばす太宰さんに、私は花の蜜を求める蝶にように、いや、蝶のように綺麗ではないが、それを求めて彼の傍まで歩み寄る。
そして太宰さんは傷に触れないように手を握り、丁寧に消毒までして絆創膏を貼られた。
「・・・。」
指を動かす。動かしづらい。
「優希ちゃん。」
「?」
「怪我をするのは生きるうえで、人は必ずしもするものだ。だが、それが自分で傷をつくった場合なら、それは怪我には入らないんだよ。」
「・・・・・・。」
私は指を動かすのを止めた。この場から逃げ出したいと思った。
いっそ逃げようか。いや、逃げたところで、私に逃げる場所がない。
「逃げ出すのかい?」
太宰さんの優しい声が響く。あぁ、逃げ道すらくれない。
いっそ叱ってくれた方が良い。怒ってくれた方が良いのに、それに恐怖を抱く。優しくされても、それすら恐怖を抱く。結局、私はどんな言葉をかけられても恐怖しか抱かないのだ。
「話したいなら話してごらん。話を聞いてほしいなら聞くよ。」
何と言おうか。学校で勉強に追いつけない。仕事で嫌なことがあった。友達関係で悩んでる。
色んな言い訳を、これまで何度も考えてきた。けれど、真実を言った事は今まで一度もない。
「私は、愛されたい」
ただ、その言葉を呟いて私は涙を流した。
「なら、私が愛してあげよう。大丈夫、私なら君の全てを愛してあげられる。」
傷だらけの体では、誰にも愛されないと思った。
太宰さんは私の体を抱き締めてくれた。ただそれだけなのに、救われた。
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作者名:翼 | 作成日時:2016年6月25日 8時