#二百七振り目 ページ16
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「お前と影華は―――こう言っちゃあ難だが、「審神者」としての結びつきが強い。運命も、生き方も。...その顔からして、思い当たるところはあるんだろう?」
『...うん』
彼女本人から聞いた生い立ち。
私だって一歩間違えていれば、影華が進んだ道をなぞっていたかもしれない。
影華だって、一歩を踏み外していなければ、私のような人生を歩んでいたかもしれない。
私たちは似た者同士だ。
根柢で、繋がりがある。
―――それは、確信している。
「それでも、一点だけ、あの人間とお前の間には、明らかな違いがある。
分かるかA?
"本当の仲間"というのがいることだ。
あいつはあれだけの時間遡行軍を引き連れてやってきたが、
そこに俺たちの間にあるような強固な絆はない。
あいつは元から一人だった。
...少なくとも、この本丸に見習いとしてやってきた時には、な。
あいつの過去は俺たちが知ったところではないし、別に知りたいとも思わない。
そこにどれだけの理由があろうとも―――。
神の安寧を崩壊させた人間が許されることは、もうない」
『......』
と、俺は思うんだがなぁ。
―――淡々と紡いでいた言葉を一度止め、鶴丸は肩を竦める。
「俺たちが、Aが、影華に勝つことを前提に話すぞ?
最終的な判断は、この神域の主であるお前に任せる。彼女の、審神者としての人生を、続けさせるのも終わらせるのも、お前次第だ」
『...うん』
「まぁ、それはその時に考えれば良い事だな。そろそろ伽羅坊がうずうずしだしてるし、無駄話はここらにしておくか」
「...うずうずしてない」
『いやしてるでしょ。その顔は』
一応、突っ込ませて頂いた。
鶴丸が笑う。伽羅がつんと顔をそむける。貞が歯を見せて笑う。
「だからA、とにかくだ―――。
もう少しだけ、頼りない俺たち刀の付喪神の助けをしてやってくれ。
本当に、あともう少しで―――決着がつくんだ。その結果がどうであろうと、俺たちは」
「―――お前と共に、進もう」
その言葉と同時に、鶴丸がぐっと拳を突き出した。
それにつられるように、伽羅も、光忠も、貞も。
そして、私も。
コツン、と固く握られた拳が当たる音。
やる。やれる。私たちなら。
私は―――私たちは―――それぞれに進む道を、確かに見据えた。
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藤猫 - コメント失礼します!この作品を読ませていただいてとても感動しました!もう、号泣しかけて親にスマホ見ながらなんで泣きそうになってんのと言われたほどです。素晴らしい作品を作ってくださり、それを見せていただきありがとうございました!とても面白かったです!! (2023年1月4日 22時) (レス) @page50 id: 8264cf3ee7 (このIDを非表示/違反報告)
りら(プロフ) - 約2年前の作品にコメント失礼します。最初から最後まで一気見してしまうほど面白かったです最後のところなんてほんとに泣いてしまうほど感動しました。とても面白い作品に出逢えたこと感謝でしかないです。 (2022年12月29日 14時) (レス) @page50 id: 1b29b09cf0 (このIDを非表示/違反報告)
アスパラ - とても面白かったです!シリアスやお笑い要素もあって、ずっと読んでいてドキドキしました。とてもいい話で、感動しましたね…。これからも頑張ってください!それでは!!! (2022年5月15日 4時) (レス) @page50 id: 3c601836b6 (このIDを非表示/違反報告)
ショートケーキの赤いヤツ - 作品完結おめでとうございます!一気読みしました、ブラック本丸とか乗っ取りとかが好きなのでとても楽しませてもらいました!次回作も楽しみに待っています!関係ないですがアンノウン・マザーグース、良い曲ですよね!この作品にぴったりです! (2021年8月16日 18時) (レス) id: 0727e3cb02 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - 完結おめでとうございます!本当にお疲れ様でした!紫苑様がこの作品を書き始めた頃から拝見しておりました。スマホを交換した際に占ツクのデータがいくつか吹っ飛んだので、記憶を頼りにようやく見つけられました(;´∀`)次回作も楽しみにしております! (2021年1月10日 18時) (レス) id: 3faa843c0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:*紫苑* | 作者ホームページ:http://twitter.com/wakagi116
作成日時:2020年4月2日 14時