肆拾*三条の夢 ページ41
ここは…何処だろう?
私はただただ暗いところに1人立ち竦んでいた。
ここは、見たことがある。
あの悪夢を見る前、必ず足をつける空間だ。
今度は、あの刀達の……?
今剣と岩融、そして"石切丸"と名乗った刀達の顔を思い浮かべる。
「……行かなきゃ」
立ち止まっていても、彼らの過去は見れない。
足を踏み出すと、そこから景色が広がった。
やはり、ぼんやりと映る。
しだいにはっきりと見え始めたそこは、彼らが横たわっていた。
『もう、いやだ……こんなあつかいをうけるなら、いっそおれてしまったほうが……』
『よせ、今剣。俺達はただの刀だ。審神者に逆らえばどうなるか分からん』
今剣は、苦しげに拳を握り締めた。
『三日月はかえってこないし、小狐丸はずっとねむったまま……こんなの、あんまりだ!!』
力強く畳を叩く今剣の拳に、岩融の手が重なった。
『今剣よ、奴はいずれ政府に捕まる。それまでの辛抱だ』
『ぼくたちはがんばった!!ずっと…ずっと!なのにいっこうにすくわれない!!!もう…いやだ…』
ついに泣き出してしまった今剣の背中は、弱々しげに震えていた。
『…次の主は、どんな人だろうね』
今まで黙っていた石切丸が、唐突に口を開いた。
内容が内容だったため、二振りは石切丸に注目した。
『つぎの……あるじさま…?』
『そう。未来のことを考えれば…まぁもしもの話になるけれどね。少しは楽になるんじゃないかな』
儚げに微笑んだ石切丸は、ずっとお腹を庇っている。
じわりと赤が滲み、未だ出血しているのが分かる。
今剣は、そんな彼を見つめたあと、ゆっくりと言葉を紡いだ。
『つぎの、あるじさまは……とてもやさしいひとがいいです。………ぼくたちをだきしめてくれる、そんなひとが…』
泣き腫らした目で一生懸命に微笑む彼の顔は、見ていられなかった。
そんな今剣を見て、岩融も続いた。
『そうだな。俺達の苦しみを理解してくれる、出来ずとも、しようと努力する奴がいいな!』
『素敵だね…逢えるといいな、そんな審神者に』
彼、石切丸の言葉を最後に、景色が歪みだした。
あぁ、これで終わりか。
目が覚めたら、どんな景色が広がるのだろうか。
「そういえば、最後に聞こえたあの声、誰なんだろう」
夢を見る前、確かに私を"主"と呼ぶ声が聞こえた。
聞いたことのある声……誰だったか―――…。
――――声が聞こえる。
声音は暗く、空気も重い。嫌な感じだ。
私はゆっくりと瞼を持ち上げた。
51人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ヒタリ | 作成日時:2018年8月28日 23時