弐拾肆＊夢と繋がる現実 ページ25
きっと、兄弟と仲良くしていた過去を思い出しているんだろう。
「それで、教えてくれないの？何で助けたのか」
「え、ああ…だって、別に最初から殺すことが目的なわけじゃなかったし」
「殺すことが目的じゃない…？」
「そ。これ以上は教えないよ」
「え、質問タイム終わるの早くない？」
「深入りされるのは好きじゃないんだよね」
殺すことが目的じゃないんだとすると…思い当たるのは…。
「じゃあ俺っちが教えてやろうか」
はっと声の方に目をやると、そこには開いた襖に寄りかかる胡座の少年が立っていた。
腕を組んで足を交差させた立ち姿はなかなか様になっている。
「教えて…くれるの？」
「あぁ、教えてやるよ。かなり単純だぜ？
ただ単に腹を貫かれたあとの反応が見たかっただけだ」
思った通りだ。ってか…
「貫かれた……え、貫通してたの？」
「そこかよ」
私からすれば１番重要かもしれない。
貫通とか本気で笑えない。短刀で貫通された。
よく生きてたな、私。
呆れ顔の彼を通して遠いどこかを見つめながらぼんやり考えた。
すると、彼が私の元へ歩いてきて、近くに腰を下ろした。
また胡座だ…。癖かな？
「妙に落ち着いてるな。俺っち達が怖くはねぇのか？」
薄く笑みを浮かべていた顔はいつの間にか真面目な顔をしていた。
「…怖くないって言えば嘘になる。でも、夢を見たから怯えていられなくなった」
私の返事に２人は「夢…？」と首を傾げた。
何を言ってるんだ…と怪訝な顔が２つ並んでいる。
「夢。この部屋での夢」
「この部屋…」
いよいよ理解できないと、頭がイカれたのかと言われるくらいに顔を歪ませた。
「ねぇ、どういうこと？ちゃんと説明してよ」
「あー…この部屋で、１振りだけ折れた夢だよ」
こんな話、本来なら現場にいた彼らに話すなんて酷なことだろう。
思い出したくない記憶を呼び覚ますのだから。
「…っ！何で…」
「何で…？いや、理由は私も分からない。
何でか見えたんだよ」
「その１振りってのは…いち兄の、ことか」
確信を持って聞いてきた彼は悲しげに眉を下げた。
「いち兄…確かにそう呼ばれてた気が…」
「それで？その夢を見たからって、何で僕達を怖がらない理由ができるの？」
「それは…言えない、かな」
言ってはいけない。そんな気がした。
けれど、彼らは理解してるんだろう。
あの時の兄の不自然な発言と、私の見た夢を繋ぎ合わせているはず。
だからか、彼らは本体に触れなかった。
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作者名：ヒタリ | 作成日時：2018年8月28日 23時
