拾伍*食事の時間 ページ16
扉を開けると、そこには一人の刀が立っていた。
「え…」
「あ、主…?」
そしてそのままフリーズ。
お互い何も言えずに固まってしまった。
厨(クリヤ)に入ると眼帯の男が包丁を持って立っている。
ここで一つぶっちゃけると、私は料理が出来ない。
そしてここの調理具は訳が分からない。
じゃあ今までどうやって過ごしてたかって?
ひたすらご飯を食べてました。
「これはこれは、光忠殿!もうそんな時間でしたか…申し訳ございません!!」
私のあとにひょっこり顔を出したこんのすけが話しかける。
「こんのすけ君?いや、気にしないで…」
眼帯して目つきも鋭いのに穏和な性格のようだ。
「審神者様。部屋に戻りましょう」
「へ、あ、そうだね。あの…お邪魔しました」
彼が何かを言おうとしていた気がするが、私も気まずかったため部屋に引っ込んだ。
書類を抱えて自室へ入ると、ようやく頭が働き始める。
「こんのすけ…あの刀は?」
「あの方は燭台切光忠。主に料理を担当される伊達の刀です」
「伊達…なるほど。一般人にいたらモテまくりだね」
「…審神者様、気にならないのですか?」
こんのすけが躊躇いがちに言った言葉に小首をかしげる。
「何が?」と問うと、こんのすけは気まずそうに考える素振りをした。
「何故、僕が部屋に戻るように言ったのか…」
「あぁ、そうそう。何で?」
「……審神者様。どこか抜けていらっしゃいますね」
これは、貶されたのだろうか…。
じっと床を見つめるこんのすけは、恐らく言葉を選んでいるのだろう。
やがて顔を上げると説明しだした。
「皆さんは、まだ審神者様を警戒しておられます。
そのため、鉢合わせしないようにと今まで誘導しておりました……。申し訳ございません」
これを聞いたとき、正直「なんだ、そんなことか」と思った。
それが理由なら、充分に納得はできる。
「謝らなくていいよ。皆のためを思って行動してたんでしょ?私ももっと気を回さなきゃいけなかったね…」
すっかり皆は部屋に閉じこもってるとばかり思っていた。
「そんな!審神者様は気を使わないでください…!
……皆さん、光忠殿が作る料理を個人で取りに行っています。だからどうか、その間は部屋に…」
少しずつ声が小さくなっていく こんのすけを見ていると、私もまだまだだなと思う。
拾陸*この本丸に……→←拾肆*既視感のある悪夢※流血表現あり
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作者名:ヒタリ | 作成日時:2018年8月28日 23時