ジェイド国２ ページ36
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「イカサマじゃないのか!?」
「イカサマしてるヒマなんかなかったでしょ―」
怪しむ男の言葉をサラッと受け流しながら、ファイは男達の掛けたお金をザラザラと袋に入れる。
「文句あるなら、あの黒い人が聞くけど――？」
お金を積めた袋をきゅっと縛ると、ファイは笑いながら黒鋼を指差した。
「あぁ？」
黒鋼はモコナとAのことで機嫌が悪く、男達をギロッと睨んだ。
「い……いや！」
「う、疑って悪かった！」
一睨みされた男達は慌てて首を左右に振って謝った。
「はい、サクラちゃんお疲れさま―。これで軍資金ばっちりだよ―。この国の服も買えるし、食い逃げしないでオッケ―」
元の席までさくらをエスコートし、ファイはAの隣に座る。
「しかし、凄いな嬢ちゃん」
店員らしき小太りの男がテーブルに飲み物を置く。
「ルールとか分かってなかったんですけど、あれで良かったんでしょうか」
「面白い冗談だな！」
さくらの言葉に男はあはははと豪快に笑う。
「変わった衣装だな、旅の人だろう？」
「はい、探しものがあって旅を続けています」
「行く先は決まってるのかい？」
「いえ、まだ」
小狼は男から飲み物を受け取ってそう答えた。
「……だったら、悪いことは言わん。北へ行くのはやめたほうがいい」
「なんでかなぁ？」
ファイと黒鋼は探るように男を見た。
「北の町には恐ろしい伝説があるんだよ」
「どんな伝説なんですか？」
「昔、北の町のはずれにある城に、金の髪のそれは美しいお姫様がいたらしい」
男は顔付きを変え、ゆっくりと話し始めた。
「ある日、姫の所に鳥が一羽飛んで来た。輝く羽根を一枚渡してこう言ったそうだ、"この羽根は"力"です。貴方に不思議な"力"をあげましょう"姫は羽根を受け取った。そうしたら、王様とお后様がいきなり死んで、姫がその城の主になった。そして、その羽根にひかれるように次々と城下町から子供達が消えていって、二度と帰って来なかったそうだ」
「それは――、おとぎ話とかいうヤツかな」
「いいや、実話だよ」
話し終えた男はファイの言葉に左右へ首を振る。
「実際に北の町にその城があるんですね」
「もう三百年以上前の話だから、ほとんど崩れちまってるがな」
「で、そんなこわい話があるから北の町には行っちゃいけないの――？」
「いや、伝説と同じようにまた子供達が消えはじめたんだよ」
男は険しい顔でそう言った。
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作者名：秋姫 | 作成日時：2018年12月17日 12時
