霧の国５ ページ33
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「！」
小狼は血相を変え、急いでさくらの元へ戻ろうとする。
「良く寝てるのっ♥」
そのモコナの言葉に小狼はズザ――ッと派手に転んだ。
「驚いた!?驚いた!?これもモコナ108の秘密技のひとつ超演技力!!」
さくらは、く〜と寝息を立てて気持ち良さそうに眠っている。
「ほんとにびっくりしたみたいだねぇ。けどねぇ、きっとこれからもこんなこと、いっぱいあると思うよ」
そう微笑むファイの横でAはパチンっと指を鳴らし、濡れた小狼を魔術で乾かす。
「サクラちゃんが突然寝ちゃうなんてしょっちゅうだろうし、もっと凄いピンチがあるかもしれない。でも、探すんでしょう。サクラちゃんの記憶を」
『のう、小狼…もっと気楽に考えたらどうだ？』
「そうそう、もっと気楽に行こうよ――。辛いことはね、いつも考えてなくていいんだよ。忘れようとしたって忘れられないんだから」
『お主が笑い楽しんでも、誰もお主を責めたりはせぬよ、小狼』
「うん、喜ぶ人はいてもね」
Aとファイの言葉に、小狼はさくらを見つめながら何か思い出したように微笑んだ。
「つーん」
微笑む小狼の頬を肩に乗ったモコナがつつく。
「？」
「モコナ、小狼が笑ってるとうれしい！」
ぴとっとモコナが小狼に頬を寄せる。
『私もだ』
「勿論、オレも。あ、黒ぴんもだよね―」
「俺にふるな」
「……ん」
『目が覚めたか？』
上半身を起こし目を擦るさくらを見てAが言った。
「小狼君！小狼君が湖に!!」
さくらは急にがばっと起き上がると、小狼が隣に居たのにも関わらず湖へと駆け出した。
「ここにいます!!」
湖に入って行こうとするさくらを、小狼とモコナが慌てて引き止めた。
「！」
振り返ったさくらが小狼を見て驚く。
「…良かった」
目の前に映る小狼に安堵してさくらは顔を緩めた。
「あのね、サクラちゃん。これからどんな旅になるか分かんないけどさぁ、記憶が揃ってなくて不安だと思うけど楽しい旅になるといいよね。せっかくこうやって出会えたんだしさ」
そう言ってファイはにっこりと微笑む。
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作者名：秋姫 | 作成日時：2018年12月17日 12時
