霧の国３ ページ31
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「黒鋼が怒った―！お茶目なジョークなのに――ん」
モコナは悪びれもなく、ファイの頭へぴょんと飛び移った。
「気色悪いことするな!!」
「でも、モコナ声マネ上手だねぇ。黒みゅうにそっくりだったよぉ」
「モコナ108つの秘密技のひとつなの」
ファイの手のひらでモコナはうふふふと笑う。
「後、107つは？」
「な・い・しょ♥︎」
「モコナったら焦らし上手――」
ファイはモコナを抱き締めて頬を擦り付けた。
「くすぐった―い」
「一生やってろ」
「あ、黒たん待って―」
「待って――」
一人先へ進む黒鋼の後を、ファイとモコナは急いで追った。
不意に立ち止まった黒鋼の背にファイがどんっとぶつかる。
「黒むん、いた―い」
黒鋼の背にぶつけた鼻を擦り、ファイが言った。
「…………」
「黒むう―？」
立ち止まったまま動く気配のない無言の黒鋼に、ファイは首を傾げた。
ぴょんと黒鋼の頭の上にモコナが乗る。
ファイは不思議そうにひょいっと黒鋼の横から顔を出した。
「………A…ちゃん…？…」
目の前を見ると、薄らと晴れた霧越しに何か祈るように上空を見上げるAがいた。
紅色の髪を濡らし遠い彼方を見つめるAは、まるで天女のようだ。
「(…ちっ…)」
「(…どうしよう…)」
「(――目が逸らせねぇ…)」
「(――目が逸らせない…)」
二人はAの姿に目を奪われていた。
「Aだ――♪」
そんな二人の心中を知る由も無いモコナは、いつもの調子で黒鋼の頭からぴょんと飛び下りる。
「おいっ」
『モコナ？お主らも』
二人とモコナの存在に気付き、Aは少し驚いたように目を丸くさせた。
「あのね――、黒鋼とファイがAに夢中だったのっ」
『夢中？』
手のひらに乗せたモコナにAは何のことやらと首を傾げた。
「な、何言いやがんだ！//この白まんじゅう！」
「黒るん素直じゃな――い」
「お前はどうなんだよ！」
「ん―？黒る―と同じかな――(……見惚れてた。…全身を魅入られたみたいに…動けなかった…)」
『少し待て』
そう言ってAは湖からザバァッと上がる。
「おいっ、服っ！//」
霧ではっきりとは見えないが、湖から上がった裸のAを目の前にして黒鋼は慌てて言った。
『服ならそこにある』
Aは黒鋼の横の木を指差して にっと笑むと、裸であるにも関わらず淡々と二人の元へ近づいた。
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作者名：秋姫 | 作成日時：2018年12月17日 12時
