霧の国１ ページ29
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「で、どこなんだここは」
目の前に広がる景色を見て黒鋼が言った。
小狼達が次に到着した世界は木々が鬱蒼と茂っており、加えて霧が出て視界の悪い一見不気味な場所であった。
「おっきい湖だねぇ。家とかも全然見えないしね」
「人の気配もないみたいですね」
『霧も出ておるな』
「モコナ、どう？サクラちゃんの羽根の気配する――？」
「強い力は感じる」
「どこから感じる？」
「この中」
小狼の手に乗ったモコナが目の前の湖を指差した。
「潜って探せってのかよ」
黒鋼の言葉にモコナはこっくりと頷く。
『頼んだぞ、黒』
Aはにっこりと黒鋼の肩をぽんっと叩いた。
「ああ!?」
「待って。わたしが行きま……………す」
四人を呼び止めたさくらは勢いよく身を乗り出そうとするが、その場で力なくふら〜と倒れた。
「おっと」
倒れるさくらを黒鋼が支え、そのまま地面に寝かせる。
「サクラ寝てる――」
「
『限界がきたんだろうな』
Aは上着を脱ぎ、それをさくらに被せた。
「オレがやろうと思ってたんだけどねぇ」
『ファイの上着は暖かそうだからな』
「じゃあ――、はい」
ふわっとファイが自分の上着をAの肩にかけた。
『これでは私がさくらに上着を貸した意味がないではないか』
そう言ってAはクスッと笑みを溢した。
「…//…」
それを直視したファイは僅かに頬を赤らめる。
『どうした？ファイ』
「何でもないよ―」
そうへにゃと笑いながらも、ファイの心中は穏やかではなかった。
『そうか、ならばいいが…黒、どこへ行く気だ』
一人森の中へ行こうとする黒鋼を見てAが言った。
「俺は待つのが嫌ぇなんだよ。辺りを探索してくる」
「黒鋼、気が短――い」
黒鋼の肩でぴょんとモコナが跳ねた。
「うるせ―」
「オレも行くよ―、黒みん」
「だから黒鋼だっ！」
「モコナも行く―っ♪」
二人とモコナは辺りの探索をしに森の中へと消えていった。
――ﾎﾞｯ。
二人とモコナが去ると、小狼は薪を集め、Aはそれに魔術で火をつけた。
薪は火花を上げパチパチと音を立てて燃える。
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作者名：秋姫 | 作成日時：2018年12月17日 12時
