高麗国１７ ページ20
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『私なら心配するな。怪我をしたのはお主のせいではない。勝手に庇ったのは私だからな』
「でも…」
『"でも"も"待った"もなしだ。行け、小狼！』
「あはは、黒りょんの次は小狼君の負けだね――。うん、でも、人数いっぱいでかかってもあんまり効果なさそうだし――先に進むべきでしょう。小狼君にはやるべきことがあるんだから」
『大丈夫だ、ここは黒がなんとかする』
Aはふわりと黒鋼の横に着地し、その肩をぽんっと叩いた。
「あぁ!?」
「そうそう、ここは黒ぴーがなんとかするから」
ファイも同じく黒鋼の肩をぽんっと叩いた。
「また俺かよ!!」
「……有り難うございます」
「あの上の方が魔力が薄い。小狼君なら出られるよね――」
そう言って、ファイは上空を指差す。
「すごく高い――。小狼、届く？」
小狼の胸元からひょこと顔を出したモコナが言った。
「おめっ！いねぇと思ったらそんなトコに隠れてやがったのか」
「それも大丈夫だよ――、あのね」
何か策があるのか、ファイは三人に話し始めた。
「何の相談かは知らないが、私をあまり退屈させてくれるな。
「すみませ―ん。すぐ終わりますから――」
「なんで俺が……！」
「行きます」
少し離れた高い岩に乗る小狼がタッと黒鋼に向かって飛び降りた。
黒鋼は棍を構え、その上に小狼が着地したのを見極めるとブンッと勢いよく棍を振り上げる。
小狼はその反動とAの風の魔法を利用して飛び上がり、天井を蹴り壊して脱出した。
「二人ともカッコいい――、"ひゅ―"」
『"ひゅ―"』
「だから、それやめろ」
「一人逃がしてしまったのだな、仕方ない。残った童に少々灸をすえるとするか」
シャラと髪飾りを揺らしながら、
ﾊﾟﾝ ﾊﾟﾝ ﾊﾟﾝ!!
秘妖の指に応じ、幾つもの球体が三人の真上で弾ける。
――ｻﾞｱｱｧｧ…
弾けた球体の水が雨のように降り注ぐ。
「なかなかマジなピンチだねぇ」
『ふむ、困ったのう』
「……ふん」
背を合わせて話す三人の衣服と皮膚を、硫酸のような雨が溶かしていく。
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作者名：秋姫 | 作成日時：2018年12月17日 12時
