高麗国８ ページ11
.
「…Aちゃん…」
『…巻き込んでしまったな』
「オレが勝手についてきたんだから、気にしないで。それより――」
ファイはAの頬の切傷を見た。
『怪我なら大したことはない』
Aは頬の傷から伝う血を手で拭いながら、ファイに微笑んだ。
傷はファイの目の前で徐々に塞がっていく。
「…魔力…じゃないみたいだねぇ」
『…ああ、特異体質のようなものだ』
「……あの人が持ってたの…
『やはりお主は知っていたか。ああ、…あれは、この世にあってはならぬ』
そう言ってAは、目を伏せて拳を握りしめた。
「…Aちゃん…？」
『…すまぬな、お主まで来ては黒が拗ねておるだろう』
「あはは、そうかも―。じゃあ、帰ろっか―」
いつもの調子に戻るとファイはへにゃっと笑い、Aに手を差し出す。
『ああ』
Aはその手に触れるときゅっと握りしめた。
「黒ぽん、ちゃんとお留守番してるかなぁ―」
『しておるとは思うが、怒り狂っておりそうだな』
二人はそれぞれ
.
.
.
.
.
「ただいま――」
Aとともに
『おらぬのか？ふむ、真っ黒くろすけは何処に行ったのだろうな』
「誰が真っ黒くろすけだ」
Aの背後に立ち、見るからに不機嫌そうな顔をする黒鋼。
『なんだ黒、おるのなら返事ぐらいしろ。それとも、拗ねておるのか？機嫌が悪いぞ』
「ね――」
「どっからどう見たらこれが拗ねてるように見ぇんだ！」
『まぁ、落ち着け。すまなかったな、一人で修理をさせて』
「勝手に出ていってごめんね――」
『一人でお留守番はさぞかし寂しかっただろう？黒』
「それで拗ねてたんだよね――、黒たんは―」
「ちげぇよ！だから、拗ねてねぇつってんだろ!!」
ここぞとばかりにからかう二人に黒鋼は怒鳴る。
――ﾄﾞｻｯ。
丁度その時、小狼達が沢山の荷物を抱えて帰ってきた。
「おかえり――、どうだった？黒たんとAちゃんとずっと言葉が通じてたってことは、あんまり遠くに行かなかったのかな」
そう言って三人を出迎えるファイ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：秋姫 | 作成日時：2018年12月17日 12時
