阪神共和国４１ ページ1
.
羽根を取り戻してすぐ、
「小狼君、凄い勢いで入ってったねー」
部屋に駆けていく小狼の後を、三人はゆっくりと追った。
『………』
「…レンちゃん？」
『あ、ああ…』
これから起きることを誰よりも知っているAは、複雑な思いで返事を返す。
「さくら！」
三人が部屋の前に付くと、さくらの手を握りしめて微笑む小狼がいた。
「……あなた、だあれ？」
瞳を開けたさくらが、小狼を見て最初に発した言葉だった。
『(…この未来だけは…、変えられぬ…)』
表情には出していないが傷ついている小狼を見て、Aは悲しげに二人を見つめた。
「おれは小狼、あなたは桜姫です。どうか落ち着いて聞いて下さい。あなたは、他の世界のお姫様なんです」
「他の……世界？」
「今、あなたは記憶を失っていてその記憶を集めるために異世界を旅しているんです」
「……一人で？」
「いいえ、一緒に旅してる人がいます」
「……あなたも……一緒なの？」
「はい」
「……知らない人なのに……？」
その言葉が小狼にとってどれほど辛くて傷つくものなのか、さくらは知らない。
「……はい」
『(…すまぬな、小狼…)』
傷つく小狼の横顔を見て、Aはギュッと拳を握りしめた。
「サクラ姫、はじめましてー。ファイ・Ｄ・フローライトと申します」
モコナを肩に乗せたファイが、不意にさくらに近寄りスッとお辞儀をした。
『…私はA＝マクフォードだ』
「で、こっちは――」
「黒鋼だ」
「で、このふわふわ可愛いのが――」
「モコナ＝モドキ！モコナって呼んでっ」
三人とモコナがさくらに名を名乗っている
.
.
.
.
,
「泣くかと思った、あの時」
降り注ぐ雨の中に一人佇む小狼を、ファイは窓越しに見つめていた。
「サクラちゃんは小狼君の本当に大切なひとみたいだから、だからこそ"だれ？"って聞かれた時、泣くかと思った。今は……泣いてるのかな」
「さぁな。けど、泣きたくなきゃ強くなるしかねぇ。何があっても泣かずにすむようにな」
黒鋼も同じく窓越しに小狼を見つめ、そう言った。
「うん。でも、泣きたい時に泣ける強さもあると思うよ」
『ああ、そして…ヒトは皆、泣いた分だけ強くなれる』
窓を背に腕を組むAが言った。
三人の巧断が小狼を降りしきる雨から守るようにして寄り添う。
『(あやつが…
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：秋姫 | 作成日時：2018年12月17日 12時
