注文の多い吸血鬼 (ページ3)

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「やれやれ、今日のところはこのくらいで勘弁してやろうかの。慈悲深い我輩に感謝せよ」

「もうなんか意味わかんない、疲れたからさっさと行って…言っておくけど、特別扱いは一切いたしかねますので」

結果的に、売られた喧嘩は買ってしまう勝気な性格のAが零の掌の上で転がされて、骨折り損で余計に疲れることになるのである。

一方、食堂に併設してあるガーデンテラスから、零と学内ユニット『UNDEAD』として活動する、羽風薫と乙狩アドニスがその一部始終を眺めていた。

「朔間さん、また性懲りも無く食堂のおねーさんに鬼絡みして…まぁ、見てて飽きないからいいんだけどさ」

「…Aさんの作る飯はうまいからな、俺も金曜日は楽しみにしている」

「確かにそうだけどねー。俺が、楽しみなのはそっちじゃないんだけどね」

「ん？羽風先輩、それはどういうことだ？」
「まーまー、それはおいおい分かるってことで」

いつもは自由きままで暇があれば女子を口説いていて、メンバーと行動を共にすることは多くない薫だが、この金曜日の零とAの様子を観察するのを密かに楽しんでいた。零は、同じ科に属する弟の凛月を溺愛してはいるが、その他のものに執着するのは珍しいからだ。あれは、生ハムに執着しているのではなく、Aにご執心なのではないかと。

「おぉー、愛し子たちよ。来ておったのか」

薫とアドニスの二人を見つけた零は、ごく自然に同じテーブルに着席する。零の持つトレーには、所狭しと主食と一汁三菜が構成されている。昼間は寝ていることが多い零は、食べれるときに食べたいだけ食べるという本能のままの食生活をしている。本人曰く、栄養バランスには相当気を使っているらしい。

「おや？わんこはおらんのかえ？」

「俺も羽風先輩も偶然居合わせたものだから。どこかで、昼寝してるのかもしれないな。」

「あっれー、朔間さんのそれ、俺らのより量多くないですか？生ハムの」

「はて、気のせいじゃないかぇ？」

零は、生ハムサラダにそれはそれは満悦な様子で、フォークでつついていた。