マグル生まれの蛇寮生【ハリー・ポッター】 (ページ6)

今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:9,242 hit

magic...5 ページ6

.

嵐のような二人が去った後のコンパートメントは嫌になるくらい静かだった。結局、あの二人が去った後にもロンの顔をみることはできなくて、ずっと下を向いて過ごした。
膝の上に置いた本をぎゅっと握りしめて、早く早くと列車が停車するのを目を瞑りながら待つ。

ﾋﾟｰｯという警笛とキキーッという車輪にブレーキがかかる音がして、ガコンと座席から振り下ろされそうな揺れと共に、列車が止まった。

「……着いたのかな？」

「そう、みたいだね」

「いつ降りる？」

「最後の方でいいんじゃないか？」

ロンとハリーがそーっと言葉を交わす。
ちらちらとこちらを盗み見ている視線が二人の方から感じられて、さっき振り絞りそびれた勇気を今度はここで使ってみつことにして、ばっと顔を上げた。

『そっ、……そろそろ、行く？』

「えっ、……あ、そうだね。行こうかな」

「う、うん！？」

急に言葉を発されたから驚かせてしまったのだろう、びくりと二人の体が前後した。ロンなんてすごく言葉がタジタジになっているし、ハリーも目が少し泳いでいる。...なんだか申し訳なくなって、勇気なんか振り絞らなきゃよかったなんて、自分で後悔して。

『ごめん』

と、言葉が小さく零れ落ちた。

「別に、キミが悪いわけじゃないよ。……………ホラ、行くんでしょ」

俯いた私の視界に、ロンの手と思わしきものが映り込む。えっ、と顔を上げれば、そっぽを向いたロンが私に手を差し伸べていた。

「……その、さっきは悪かったよ。自分でも言い過ぎたと思ってる...」

ふふ、と小さくハリーが笑う。面白可笑しそうにロンと私を交互にみては、嬉しそうに、はにかんだ。そんなハリーにロンが耳まで顔を真っ赤にしてむくれた表情を見せる。そんな二人を見て、なんだか私も嬉しくなって、心が温かくなって、目が潤った。

『……うん、私も……人見知りだって、伝えておけばよかった。ごめん』

手をとる、なんてことはまだちょっと、私にはハードルが高くて難しいけど。さっきよりはきっと自然体で笑えていると思うから。

「ほら、さっさと行こう。置いてかれちゃうよ！」

手は取らないとわかったロンが、その手を引っ込めて、ハリーが楽しそうにロンの背を両手で押しながら、私に振り返ってコンパートメントを出る。

ロンとの和解に、そう時間をかけたつもりはなかったけど、もう列車には人がいなくて、「おお、三人で最後か」なんていう男の人の声が聞こえて、咄嗟に二人の影に隠れるようにして身を縮こませた。

.