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「はぁ〜ぁ」
「どうしたんですか? 太宰さん」
「いやね、見事にやられてしまったのだよ」
「?」
あの後 一体どんな方法で私を喜ばせてくれるのかと思いきや
ふと、Aは一言、
『昨日、作之助がね……"太宰は変わった。あの時よりも笑ってる顔が豊かで嬉しい"…って』
それだけ言い向こうから敦くんが走ってくるのを見つけ『じゃあ、私の勝ちね』と笑う
驚いて何も言えない私をよそに立ち上がった
そうそう、と付け足し振り向くと
『今の方が、生き生きとしてて私も嬉しいよ』
『っ!!』
微笑みながら言う笑顔が美しかった
『じゃあ、お仕事頑張ってね』
立ち去る後ろ姿を、やられたよと思いながら見つめ続けた
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「太宰さん、一体何があったんですか?」
「んー」
探偵社までの帰り道 敦くんは気になるように聞く
「Aの事は知ってるかい?」
「はい、太宰さんの知り合いですよね」
たまに太宰さんが言っている、と付け足す。実際に会ったことはないのだろう
Aは探偵社の社員ではないからね
「そう、その子がまたねぇ」
「?」
私の言葉を不思議そうに聞く敦くん
昔から、私が自 殺をしようと試みるとやんわりと止めに入る
かといって私の考えを否定するとか、なぜ死のうとするのかとかは言わない
ただ、一度だけ
『私がいなくなったら寂しいかい?』と
そんな無用な事を聞いたことがある
我ながら私らしくないと思った。違う人格が勝手に私に喋らせたのだろうかと思うほどに
そんな事を誰かに聞くなんて ましてやAに
彼女の事だから寂しくないとは言わない事だって分かってる
私が彼女の大事な人だという事も自負している。私や織田作の事を誰よりも知っているように
私も、Aの事はよく知っているのだ
『寂しいよ』
本に視線を下ろしたまま、そう言った。答え方がなんとも彼女らしい
それと同時に言葉にしてくれた事を嬉しく思う
『太宰がいなくなったら、一人になっちゃう』
『Aがかい?それはないだろう?』
疑問に思うと、パッと顔を上げた
『太宰がだよ、そんな事させないけどね』
『っ!!』
また本に視線を戻すと 何事もなかったように読み始めた
友人がいなくなるその状況で私の事を気にかける所が彼女らしい
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「敦くん、」
「はい?」
立ち止まった私に 淳くんも止まる
「私がもしもの時は彼女にこう伝えてくれたまえ」
"一人は 寂しい"と
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柚子の香(プロフ) - キリカさん» いえいえ!頑張ってくださいね! (2018年8月27日 17時) (レス) id: 174fdb4db8 (このIDを非表示/違反報告)
キリカ(プロフ) - 柚子の香さん» ありがとうございます。ほんとだ"敦"ですね。すみませんありがとうございます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 0facb3a838 (このIDを非表示/違反報告)
キリカ(プロフ) - 唯我独尊丸さん» わぁ ありがとうございます。うれしいです! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 0facb3a838 (このIDを非表示/違反報告)
柚子の香(プロフ) - 凄く面白い!ただ、ひとつだけいいですか?漢字が『淳』では無く『敦』だと思います。なんかすみません。この作品大好きです!更新楽しみにしてますね! (2018年8月27日 0時) (レス) id: 174fdb4db8 (このIDを非表示/違反報告)
唯我独尊丸(プロフ) - 凄く面白かったです!イッキ読みしちゃいました笑更新頑張って下さい!楽しみにしてます! (2018年8月26日 23時) (レス) id: 2689cacca6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キリカ | 作成日時:2018年8月22日 19時