世界は麗らか【文スト】

03. ページ4

.




コーヒーの匂いが、私の部屋いっぱいに香る




「いい香り」



ほっとひと息つけるこの時間が大好き。太宰はちゃんと仕事してるかな




ﾁ-ﾝ



「あ、焼けた」



オーブンを開くと 芳ばしいバタークッキーが出来上がり一枚食べる




「なかなか、かな」




よし、今日はゆっくりしよう。クッキーとコーヒーを準備して椅子に座る




「………ん？」




いざ食べようとしたら、窓のすぐそばにある木に何かが引っかかっていた




窓を開けて見てみると、赤い風船が目の前に。下には半泣きの女の子とそれをとろうと木の枝を伸ばして頑張る男の子




ありゃりゃ




「うわーん!風船とって〜!!」



「んー!あとちょっとっ……」




ﾋﾞｭｳｩ!!



「あっ……!!」




その瞬間 強い風が吹き 風船が揺れる



「よっと!」



窓からジャンプして 風船をキャッチ。よかった取れた



着地して女の子の方を向くと 泣きながらﾎﾟｶﾝとしていた。



え、どうしたんだろ？



「はい、風船」



「あ、ありがとう….!」


「うん、よかったね」



ﾎﾟﾝﾎﾟﾝと頭を撫で男の子の方を見る。目が合うと少しﾋﾞｸｯとした




「大丈夫？怪我してない？」



「あ、う、うん」



何故だろう、そんなに元気がないのは



「ちゃんとお礼言わなきゃダメだよ!」



女の子に指摘されると、男の子は少し恥ずかしそうに「うっ…」と言った




私に一歩近づいたので しゃがんで目線を合わせる




「あ、あり…がとう」



うつむきながら、小さくお礼を言うその姿にきゅんとする



あ、そっか。



私は男の子の頭を優しく撫でた。



この子は元気がないんじゃなくて、悔しかったんだ。自分が頑張って取ろうとした物を私が手を貸してしまったことが。



助けられてしまった事実が。きっと自分の手で取ってこの子に渡したかったのだろう、




「かっこよかったよ、とっても」



「………ｯ!」




顔を上げて目を合わせる。その姿は小さなヒーローのよう




「頑張ってくれたから、あなたもお礼を言って」



女の子にそう言うと、「うん!」と言い男の子の手を取った



「ありがとう!!嬉しかったよ!!」



「……!!…ｯうん」



顔を合わせて笑う二人を微笑ましく思う。いいなぁほっこりしてくる




「あ、そうだ」




ちょっとまっててね、と言い部屋に戻りクッキーを二人分包む




「これ、あげる」



渡すと嬉しそうな顔をして「「ありがとう!!」」と言いぎゅっと抱きつかれた



.

04.→←02.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す