14.歓迎 ページ15
ロンドン・マッケンジー邸…──<シエルside>
屋敷の呼鈴を鳴らす。勿論、正面の入り口からだ。
シ)「本当にアポは取り付いたのか?」
セ)「ええ、それが…寧ろ歓迎しておられるようでしたねぇ」
シ)「歓迎?」
セ)「『ファントム社のような大企業とビジネスのお話ができるなんて』と」
ビジネス?
僕は内心首を傾げた。
シ)「お前…どんな理由をつけたんだ(-_-;)」
セ)「いえ、私は何も。お言葉を返すようですが、坊ちゃんがマッケンジーへビジネスのお話しを持ち込んだことがおありなのでは?」
シ)「覚えがあったら僕がアポを取る」
セ)「そうですね。
マッケンジーと言えば“Perl Shield”…有名な保険会社。ファントム社と無縁も良い所ですね」
シ)「“Perl Shield(真珠の盾)”?」
セ)「有名は有名でも、「知る人ぞ知る」と言った所でしょうか?
どんな真珠(命)も強固な盾(マッケンジー)が保証する…。顧客の名前は全て匿名か偽名だそうです」
シ)「ほぅ…」
どんな命も金と引き換えに守る。
シ)「裏の鼠(ネズミ)たちの間ではさぞ有名なことだろうな」
女王の死神がネズミの命を守る。その絵面がなんとも滑稽で、小馬鹿にしたように笑ってしまう。
執事)「はい」
程無くして、執事が扉を開ける。タナカ程ではないが、古株と言った感じがする。
セ)「昨晩お電話致しました、ファントムハイヴ家の者です」
執事)「勿論お伺いしております。私は当家執事、レオナルド・シュテッカー申します」
“シュテッカー”…首斬り(処刑人)か…。
流石は女王の死神。執事の名前まで不吉だ。
セ)「執事のセバスチャン・ミカエリスです」
レオナルド)「思いの外お若い!しかし流石シエル・ファントムハイヴ伯、よく出来た執事をお連れです」
シ)「!」
なぜ僕の名前を…?
それに初対面のセバスチャンを『出来た執事』だと?
執事)「どうぞ。アダム様は既に応接室に」
シ)「ああ…」
朗らかな笑顔の中年執事に続く。
廊下ではすれ違う使用人が愛想の良い笑顔で口々に挨拶をし頭を垂れる(昨日僕たちと顔をあわせたメイドを除いて)。
なぜだ?保険会社と製菓会社のビジネスなどちぐはぐ過ぎて怪しいだろうに。
セ)「ここまで歓迎されると逆にキナ臭いですね」
囁くセバスチャンに、頷きで返事を返し、『油断するな』という意味を込め視線を送る。
──コンコン
執事)「失礼致します。旦那様、伯爵をお連れしました」
ア)「どうぞ」
26人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ