13.少女と葬儀屋 ページ14
<アンダーテイカーside>
お客)「主人をお願いします…」
アン)「は〜い。またどうぞ〜」
貴)「…」
あれからAと店先に立っているけれど…中々伯爵は来ない。まぁ、頼まれたのは『しばらく』…。一日じゃないからね。
「お客さん」に状態を確認する。腐敗もなく顔色も程々…。白粉だけで十分か。
貴)「…」
アン)「? 怖くないかい?」
小生の横でじっ…とお客さんを見るAは無言で首を振る。感情を読み取ることはできない。でも怯えていないことは見て取れた。
お客さんを棺桶の中に横たえ、さぁ仕事だと白粉を手に…あれ?
いつも所定の位置に置いてある(まぁ、片付けてないだけなんだけどね←)道具がいつもの位置にない。
貴)「わっ、粉っぽ…」←
アン)「何してんの」←
白粉で遊ぶA。
アン)「いけないねぇ。ほら、返しておくれ?」
貴)「やだ」
アン)「そんなにお気に入りかい?まだお化粧する年じゃないだろう?」
おませさんだねぇと言ってからかえば、違うとAはさっきと変わらぬ表情で首を振る。
貴)「嫌がってる」
アン)「?」
貴)「『男が白粉なんかできるか』って」
Aの視線の先には、「お客さん」。確かに、彼はこの辺りでは堅物として知られた地主だった。でもこの辺りにストリートチルドレンはいない。つまり、Aが出会うはずのない人間なのである。
アン)「でも…顔色が蒼白じゃあ奥さんに合わせる顔もないと思うけどねぇ。言葉通りの意味で」
貴)「…」
今度は宙に目を向け、しばらくしてから白粉に視線を落とした。
貴)「はい」
小生に白粉を渡す。
貴)「『早くしろ。あいつのためだ。一瞬だけと思って我慢してやる』…だって」
アン)「りょうか〜い」
笑いながら少しだけ「お客さん」にお化粧…。もしかして…あの子には“視えてた”のかねぇ?チラリとAを見れば、退屈そうに店の棺を見て回っていた。
アン)「は〜い、終了〜。そろそろ神父さんが来る頃だからちゃんとしてるんだよぉ?」
貴)「ちんぷ?」←
何とも失礼な聞き間違い。
アン)「神父。お葬式をしてくれる教会って場所の偉い人だよ」
貴)「しんぷ…神父…」
アン)「?」
貴)「ん〜〜…?」
Aそのまましばらく棺によしかかってうんうん呻っていた。小生は笑いながらその姿を遠目に傍観する。まったく…頭がおかしいのか真剣なのか。
伯爵はそのうちお迎えに来るんだろうけど…何だか渡すのが惜しくなっちゃうくらい面白いかもしれないね。この子…。
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