【碧棺左馬刻】鳴かぬ蛍が身を焦がす【男主】

疑惑の義弟 ページ10

『アニキ、オレ用事があるんで今日のところは失礼します！』


でかい声でばたばた支度をして、早々にAは事務所の階段を下りて行った


「最近のAおかしくねえか？」
「だよな。妙に早く帰るし、まだ昼前だぞ？」


組の連中が階段を眺めながらぼそぼそ言い合う

確かに最近Aは変だ
前から変なやつだったが、今は尚更

さっさと帰るし付き合いも悪い
事あるごとに時計を気にするし、そわそわしている


「もしかしてあれか…？」
「アレだよな」


うぜえと思いながら自然と耳がそちらに集中してしまうのも、仕方ないことだ



「「彼女だな！！」」



グシャッ！！と鈍さと得も言われぬ恐怖を煽る音がした



「あ？」



とある資料が左馬刻の手の中で無残な姿に変わり果てた音だった

必死に意味の分からない命乞いもとい謝罪する組員を横目に左馬刻は
疑惑の義弟の隣に見知らぬ女が居座っていることを考えた



「………んなわけねぇ」



と、思いつつ
あいつのことだから、彼女なんかできたら絶対に大事にするはずだ
とか
顔は無駄にいいくせバカだからえらい女に引っかかってるかもしれねぇ
とか
余計なことばかり考えてしまう


喉奥が痒くなるような感覚を覚えつつ
左馬刻はAへの尋問を決意する

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