【入間銃兎】運命だけど、恋じゃない。【男主】

not cross ページ26

「さ い あ く だ……ッッ！！！」



ごすん。
丸太に頭を打ち付ける。



「銃兎、薪割りならそこにある斧を使うといい。お前では頭で割るには早すぎる」



ええそうですか理鶯貴方は頭突きで割れるんですかまあこの際突っ込みませんがね、そこには。



先日、我が妻に不貞をはたらいてしまった。



いや、不貞をはたらいたという表現はおかしい何故なら、俺達は夫婦だからだ。
営みとして何一つおかしくない。


ただ


ひとつだけ大きな問題がある。




「Aに……嫌われてしまった」




あの日から二日しか経っていないが肌で感じる。ピリピリした空気。
怒っている。絶対に怒っている。

というか！！元々ヒートが来るまでことをしないという約束はしていませんし手を出さないとも言っていないですし。



「はぁぁぁ…………」



いや、いや……わかっている。ただの言い訳だということは。
けれども、抗いがたいんだ。
大好きな運命のオメガの匂いには。



「Aと喧嘩でもしたのか」
「理鶯貴方って人は奇妙な場面でエスパーですね」



ついでにその奇怪な虫とも獣ともつかない食材はいれるのを止めていただけませんか？



「銃兎が悩むのはAのことばかりだからな」
「……えぇ、そうです大正解ですどうやら、嫌われてしまって」



あぁぁぁ思い出すだけで胸が、裂ける。
手を繋いで(※繋がせた)お互い名前呼びになって(※呼ばせた)手料理まで食べたのに……


サイアクだ


絶望したような失望したような抜け落ちた瞳が、表情が
ペンキをぶつけたようにべったりと、ぬるく



「私と、あの子は……ただの運命だったんです」



ただの運命だったんだ。出会ってしまったんだ。
それがこんなにも、胸を、心臓を、抉るなんて。


先日、やっと気付いた。
わかった気がした。


Aが妙によそよそしいのも
私を他人のように呼ぶのも


オメガとして酷い扱いを受けてきたからじゃない。それだけじゃなかった。




俺とAは、他人だった。




運命だと思ったから婚姻を結んだ。
可愛いと思っていたのは俺が一方的だっただけ。

好きとも愛しているとも言っていない。
言えるほど、お互いに知った仲ではなかった。



Aにとっては、たった一つの共通点で婚姻を結んだよくも知らない相手に襲われかけた。



ということになる。

なんて愚かな行動だったんだ。
俺は今後、あの子にどう接したらいいんだ？

定められていた運命→←ただそれだけの人生

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