我執_2 ページ11
「私のために、やめてください。」
一体どういうつもりだ。
オメガが身内にいると知られたくないから?
面倒事を起こされると困るから?
…結局、運命なんてただの本能だよ。
ああ神様。神様ってだけあってあんたは最低だな。
『何も、知らないくせに勝手言わないでくださいよ』
だからって辛かった経験を他人に教えて、いかに相手の残虐性を唱える俺も、最低だ。
気遣いと、優しい腕に、きっと入間さんは黙って聞くだろうとわかっているからこそ、俺は。
『やっと、掴んだ仕事なんですよ!?そんな簡単に手放せるわけないでしょ…』
オメガが定職に就くことの難しさを延々と説いたとして、一体何になる?
相手のことをよく知りもしないのに、貴方ならわかってくれると思ってたのに。なんてのたまう人間には、なりたくなかったはずなのに。
入間さんの腕の中で、はた迷惑な癇癪をぐちぐちと。
これじゃ、俺を僻む奴らと何もかわらないじゃないか。
どうして入間さんは、そんなに冷静に俺を抱きしめるんだ。
「……私の言い方が悪かったですね」
目をかけていた子供に失望するような声音に肩を震わせる。
なんだかんだ、寄りかかっていたのだと気付いてしまった。
苦手だと、怖いと、今際の際は嫌いとまで思ったのに、次の言葉が気になって恐ろしくて仕方ない。
肩を掴まれて、目を合わせる。
緑色の目に吸い込まれそうになる。
怖い。
運命の人に拒絶されるのが怖い。
「傷ついている貴方を見るのが耐えられない私のために、仕事を辞めてください。」
……奇怪ではないが難解でよくわからない。
傷ついている俺、を見るのが耐えられない入間さん。
だから入間さんの精神衛生的な意味で……って、それはつまり。
『えっと……心配、してくれているんです?』
「ええ」
うわーーー!!!
なんでかわからないけど叫びたい!!
大真面目に頷かれたら、心臓がギュウッてなった。
頬がどんどん熱くなるのを感じる。
「仕事に就く難しさは理解しています。けれど…貴方が泣いてまで続けることは無い。」
可笑しなことに、俺は今泣いているらしい。
骨ばった親指が目の下をなぞって、くすぐったい。
「ましてや今は一人ではないのですから。もっと、頼ってください。」
切なげな目で訴えられ、顔を真っ赤にしながら泣くという器用な芸当。
いつの間にか、首筋の気持ち悪さはなくなっていた。
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Last(プロフ) - 抹茶タピオカ2号さん» 抹茶タピオカ2号様、ありがとうございます!今後の励みになります! (2021年4月4日 12時) (レス) id: 359977b810 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - どぽぽさん» どぽぽ様、ありがとうございます!読んでいただけてとても嬉しいです。 (2021年4月4日 12時) (レス) id: 359977b810 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号 - ヤバいですねもう最高です。神ですか?神なんですか?もう最高過ぎます。口のニヤニヤどうにかしてくれませんかねッッ?!?!(((殴とても面白かったです!完結おめでとうございます!!神作品ありがとうございました!!!!! (2021年3月15日 0時) (レス) id: 055f35baff (このIDを非表示/違反報告)
どぽぽ(プロフ) - はぁ、好きです。好きすぎてしんどいです。夢主くんと入間さんの関係性が凄くタイプです。読んでいる間ずっとニヤニヤ口角が緩みました笑もっと早くこの小説と出会いたかったです。過去の自分を強く呪ってます…。素敵な小説ありがとうございます!! (2021年3月4日 14時) (レス) id: 7f61df18d8 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - てる。さん» わーい、ありがとうございます。 (2021年2月10日 18時) (レス) id: 359977b810 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Last | 作成日時:2020年3月20日 22時