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月貴の顔は、真っ青
ホロコーストから目を背けるように
月貴はぐっと目を閉じた
寂雷の腕を掴む手は
小刻みに震えている
「月貴…私は…!!」
「やめてくれッ!!…今更、言う事なんて無いだろ……」
脳が理解できず、かき混ざる
月貴が寂雷を見上げる
「行きましょ、先生」
そう言って腕を引く
その笑顔が能面のようで
「六堂君」
逆に腕を掴んでいた
諭すように見つめる
彼は驚いて
ああ、傷ついた目をして
「…っ」
かなしそうに目を逸らし
腕を振り払って
逃げるように去ってしまった
雑踏に紛れる背中を
ただ見送ることしかできない
だが
「…月貴、待っ_」
追いかけようとする
もう一方を片手で制す
入間銃兎は寂雷の顔を半ば睨みつけるように見る
それに対し、寂雷は目を細める
銃兎が口を開く
「なぜ、貴方がここに…」
「それは今、本当に必要な情報ですか」
自分でも恐ろしく冷たい声
しかし、月貴の真っ青な顔が離れず
その原因であろう彼に苛立っていたのだ
「君は、彼とどういった関係なのですか」
「それはこちらの…いえ。月貴は、高校の同級生です」
同級生、か
ああ、嫌だ
「私が聞くのは筋ではないのでしょうけれど、彼と何があったのです」
私の知らない彼を知っている
今はもう手に入らない時間を握っている
それがどれほど恐ろしく
妬ましいことか
「…その前に、貴方こそ月貴とどういったご関係なのですか」
彼との関係
怪訝な表情
どうしたらよいのだろう
パッと口から出てこない
「私は、彼の…」
彼の笑顔が脳裏を過る
先生、と呼ぶ
あの笑顔を
「私は、彼の___友人です」
ぱらぱらと
鼓動に合わせて、なにかが壊れていった
罪悪感
どうして、本当のことを言わなかったのか
「友人、ですか」
どこかほっとしたような銃兎の表情に寂雷は苛立つ
ただの八つ当たりだが
「月貴は、なぜ神宮寺寂雷と…まさか、病気を?だとしたら、俺のせい、なのか」
聞きたいことは山ほどあった
しかしそれ以前に
『月貴』という呼び方が、寂雷の神経を逆撫でする
親し気な口調
昔、彼を傷つけた?
だとすれば、彼がヨコハマに来て一番会いたくなかった『アイツ』は
「…質問に、答えていただけませんか」
彼と一体何があった
内容次第では容赦しない
彼のため?違う
ただの、私怨だ
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Last(プロフ) - いおさん» ありがとうございます。詩的な表現に気を遣っていたのですが、そう言っていただけてとてもうれしいです。完結までよろしくお願いします。 (2019年6月1日 21時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - 素晴らしすぎる作品ですね…!続きが気になり過ぎて堪らないです!!文章も綺麗で、何から何まで素敵な作品です…!!これからも頑張ってください…!! (2019年5月28日 23時) (レス) id: 1d7aa46e15 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 彩華さん» ありがとうございます。お話も割と終盤ですが今後も楽しんでいただけるよう頑張ります。 (2019年5月26日 15時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - しんどい…好き…めっちゃ心抉られるくらいキュンときます…俺的にはどストライクすぎます。作者さん好きです() (2019年5月25日 0時) (レス) id: 3d53cc1cd6 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 腐女神さん» ありがとうございます。完結まであとわずかですが今後とも気長に待っていただけると幸いです。 (2019年5月19日 2時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Last | 作成日時:2019年4月27日 1時