海 ページ8
裕「行こ、」
車を停めて、後部座席のドアを開けると
Aちゃんに手を伸ばした
「…裕君…」
裕「行こうよ、夜の海もいいよ…」
躊躇いがちに出された手を掴んだ
裕「捕まえた、笑」
「…やだ」
裕「行こ、ってば」
ぐい、って彼女を引き寄せる
「…裕君…てば」
笑
笑
やっと車を降りた君と、防波堤を歩いてく
真夜中の海
波の音が、静かに繰り返される
繋がった手と手
無邪気に遊び、一緒に帰ったあの頃みたいに…
「静かだね…」
裕「ん」
「ここ、良く来るの？」
裕「一人になりたい時にね…」
「裕君でも、そんな時あるの？」
裕「…笑、あるよ…」
「…そう、なんだ…」
裕「色々な事…あるからさ…」
ぎゅ、繋いだ手を力を込めた
裕「Aちゃんは、どうした？」
そろそろいいだろう、そう思って核心をついた
何で急に連絡してきたの？
何があったの？
「…私は…」
裕「？」
「…おかしいの…」
裕「ん？」
「何をしてても…何を考えても…」
「裕君のことばっかり考えちゃうの」
「裕君、今何してるかな？って…」
「どこにいるの？」
「テレビで裕君を見れば…胸がドキドキして…」
「直視できないの…」
「私、おかしいでしょ？」
「…ねぇ、裕君…」
涙で曇った瞳で君が俺を見つめる
「私…どうしちゃったの？」
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作者名：トウコ
| 作成日時：2019年5月25日 18時
