全ては夢 ページ16
裕「Aちゃん？」
裕「Aちゃん…」
バックミラー越しに
後部座席に横たえた彼女を呼んだ
裕「起きて…」
.
.
夢から…起きて
現実の世界…
君は、俺の幼馴染で
同じく幼馴染である大輔の奥さん
可愛くて、甲斐甲斐しくて、真面目な
ごく普通の女性
.
.
あの日、ガーデンショップで出逢う前の二人に
戻るんだよ
「…ん、ッ…」
二回瞬きをしてやわら身体を起こした彼女
「…ここ…」
裕「着いたよ…」
彼女が住む街の駅前
「…え…」
何がどうなったのかわからない、そんな表情の
君の瞳がゆらゆら揺れて…今にも泣き出しそう
裕「ごめん…」
全ては俺が悪い…
勝手に君に横恋慕して、君を振り回して、そして
あんなこと…
「…ど、して…」
君は、覚悟してたんだろう
俺との一線を越える事、それによって
君と大輔の関係が壊れてしまうことを…
それでも、いい….と
そうなっても構わない、と
「…私は…」
.
.
.
裕「夢だったんだよ、全部…」
「…！？」
裕「俺とAちゃんは、あの日ガーデンショップで出逢った……」
裕「ただ、それだけ…」
「…裕、く……ん」
裕「それ以上の事は、何もない…」
「…それ…っ…て」
裕「君と俺は…ただの幼馴染…」
裕「ただ…それだけ…」
「……ッ、」
「…遊び、だったの？」
裕「え？」
「遊びだったの？からかってたの？」
ちが…
そう言いかけてやめた
「裕…君…？」
揺れてた瞳から、涙が一雫流れて落ちた
「何か言って…？」
.
.
裕「別に…」
喉の奥に詰まった言葉をやっと吐き出した
「…酷い…」
「裕君…酷い…」
何を言われても構わない
彼女が、俺を忘れてくれるなら…
裕「早く降りて…」
「…え？」
裕「見られたら困る」
「……裕…君…」
裕「じゃあね、大輔と仲良くね」
「……」
.
.
.
「さよ……なら…」
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作者名：トウコ
| 作成日時：2019年5月25日 18時
