翡翠の涙。瑠璃の笑み。〈俺の彼女 お話集40〉

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太輔side

太「思い出してよ…」




「…？藤ヶ谷…さん？」




君の瞳が、不安でゆらゆら揺れてる…

こんな事…昔もあったっけ





知り合ったばかりの時も

付き合い始めた時も

初めてのデートで、手を繋いだ時も

初めてのキスの時…

初めて…君を抱いた時も…


いつも…

君は、そんな風に俺を真っ直ぐに見つめて

瞳を揺らしてたね…





俺は、今でもはっきり覚えてるよ






太「俺たち…初対面じゃないよ…」



一歩…君に近づく




太「前に、会ったでしょ？」



また、一歩…




「すいません…あの、覚えてなくて…」





太「記憶…喪失？」




「…お医者さんには、多分…一時的に
一部分だけが、欠落してしまったんだろうって…」





太「どうして…俺の事だけ？」




「………」





太「何で…だろ？」

一番、覚えてて欲しい事だったのに…




「……それは…」





太「医者は、なんて？」





「…思い出したくない事があると…って」





太「思い出したくない？」





「…ごめんなさい、失礼な事…」





太「それ、って…
やっぱり、俺たちには過去があるって
事だよね…？」





「…藤ヶ谷…さん？」





太「君が、無意識に、俺を思い出したくない…って思ってしまうような過去が…
俺たちにはある…」





「……それって…どういう…」





太「知りたい？」





「………」






太「知りたいなら…ここに連絡してよ…」

今日、君に渡そうと思ってた
俺の名刺…
裏には、携帯の番号




太「君が…知りたいなら…」




太「俺は、いつでも待ってる…」




「……」






太「その代わり…誰にも言っちゃダメだよ
君の…今の恋人…玉森にも…」





「…！」





太「絶対内緒だよ…」

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