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薬研さんは眉根をよせて、明らかに嫌そうな顔をした。
『や、見えなかったら意味ないじゃな、い、ですか…』
言ってる途中から薬研さんは、漫画でいう怒りマークが付いてそうな顔に変化していった。
私は薬研さんの殺気に怖じ気づいて声が小さくなってしまった。
「わかっててしてるよな、お前」
わかってて、とは。
薬研さんの顔に、にこっ、と陽気な効果音が付くような笑顔が表れた。
私は嫌な予感を察知し、ぎゅるん、と体を回転させ後ろを向く。
.
残念、壁。
『oh…』
メリィ、と、木が悲鳴をあげた。
それは私の横から聞こえた。
恐る恐る振り返ると、あらまあ、きれいなお顔に笑顔が貼り付けられて。
長細い指で両の頬をがっちりと掴まれた。
指長細すぎ、痛い。
『やふぇんはん。とぅめがめりほんれまふ』
爪。
「お?随分と余裕だな。体に教えてやるか」
?
??
???
『や、わの』
頬を掴んでる手とは反対の手がバスローブ劣化番みたいな私の服の腰の紐を外した。
えっ。
いや、それは駄目でしょ。
私未成年。あんだすたん?
薬研さんの手は太ももを滑っていき、ぎりぎりのところで止まった。
「あー…やめだやめだ。そんなに震えられたらな」
はぁぁ、と豪快なため息を吐く薬研さん。
私は目の赤い三日月宗近さんと目を合わせていた時と同じくらい震えていた。
怖かった。
なんか、ここに来ていろいろな恐怖を知った。
こういう恐怖、呪い系の恐怖、神様を目の当たりにして、さらには命を狙われるっていう恐怖。
そして、生々しい死の恐怖。
…。
泣きそうになる。
ポジティブ思考を忘れたら精神的に死んじゃうぞ。
何日経ったかわからないし。
ご飯食べてないし。
緊迫したままだし。
死にかけるし。いや、たぶん死んだし。
…気持ち的に。
なんだかこの現状にもだけど、なんで私が。という感情が沸き上がってきて、涙腺が緩んだ。
ぐっと堪えるが涙は出てくる。
目の前の薬研さんが歪んで、涙のせいか明るくなった気がした。
『っう』
何かがぷつりと切れてしまった。
涙が止めなく流れていく。
温かい涙はすぐに空気にさらされ冷えた。
冷たい涙が頬を伝うたび、よくわからない感情が込み上げてきて、涙と変わって流れていった。
『ぐ…』
泣きたくない。
けど、相当我慢していたのか。
私の気持ちなんて関係なしに涙は流れていった。
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ニャンコソバ2(プロフ) - 若葉さん» うわぁあ!!まだ見てくださってた方が…!!ありがとうございます頑張れます…!! (2020年11月8日 10時) (レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - 更新待ってます! (2020年11月8日 1時) (レス) id: 5ef262c096 (このIDを非表示/違反報告)
ニャンコソバ2(プロフ) - 幸別愛友さん» ありがとうございますー!!!これからもどうぞよろしくお願いします!! (2019年12月14日 6時) (レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)
幸別愛友 - この世界観すごく好きです!続きがすごく楽しみです!待ってます!! (2019年11月12日 23時) (レス) id: 978af02bfc (このIDを非表示/違反報告)
ニャンコソバ2(プロフ) - さらさん» うわぁあありがとうございます!!!!!オチは悩み中です…。いきあたりばったりで書いてる駄作者なので…。 これからも応援よろしくお願いしますっっっ (2019年11月5日 22時) (レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニャンコソバ | 作成日時:2018年12月31日 17時