「再会/第一話」 ページ4
言葉を失う僕を見て、彼は病み上がりの微かな笑顔を浮かべた。
「どうしたんだい?美波。鑑賞されるべき美の化身が逆にこちらを見るのではあべこべ……うおっ?!」
僕は走り寄り彼の懐へと躊躇わず抱きついた。
手から離れた毛布が宙を舞い、綺羅びやかな布に落ちる。
「きゅっ、急にどうしたのだね?!嬉しいけれど、そんなに強く抱き締めては君の腕が…。」
尚抱きしめ続ける僕を見て、ふと言葉を止めた。そして彼は柔らかな表情を浮かべ、愛おしげに僕の頭を撫でた。
低い日差しが彼の輪郭を照らす。それは彼の隈と痩けた頬をより際立たせた。
お互い憔悴した顔を見合わせるも、寝起きだからか、疲れからか、ぼやけてよく見えない。
動かす手はそのままに、彼は穏やかに口を開いた。
「…心配をかけたね。もう、大丈夫だよ。…美波?君、もしかして泣いているの?」
僕は精一杯言葉を伝えた。
陽の光に暖められた風が室内へと入り込み、心地よい感覚が髪と首を撫でる。
「…………………ぉ、え…り……。」
震えた喉から絞り出した声は掠れて言葉として成立していなかったが、彼は理解したようにまた目を細めた。
「ただいま、美波。」
丁度、パタパタと軽快な足音と、もう一つ小動物のような愛らしい足音が聞こえてきた。
僕たちはそのまま音の方へと目をやった。
軽いノックの後、愛しい彼の人形たちによって静かに扉が開かれた。
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みん。(プロフ) - 夜さん» 数多ある作品の中からここを覗いて下さりありがとうございます、さらにコメントまでいただけるとは光栄に思います!これからも夜様に楽しんでいただけるような、素敵な作品になれるよう心を込めて執筆して参ります! (2023年4月17日 1時) (レス) id: febc79156f (このIDを非表示/違反報告)
夜 - とても素敵なお話で一気に読み終えてしまいました!この先どんなお話になるのかわくわくです!これからも作者様のペースで更新頑張ってください! (2023年4月16日 21時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
みん。(プロフ) - 朱憑さぶさん» 前作をお読みくださりありがとうございます!嬉しいお言葉に舞い上がっております!そしてご指摘を受けるまで気づかなかった私自身に吃驚しております、教えていただき感謝です!! (2023年3月19日 4時) (レス) id: febc79156f (このIDを非表示/違反報告)
朱憑さぶ - 前作から来ました。とても素敵な作品ですね!お師様Pにはたまらない作品でのめり込んでしまいました、!ところでなのですがオ,リ,フ,ラ立っちゃってます…早々に回収していただけると助かります… (2023年3月18日 23時) (レス) id: 2394de2614 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みん。 | 作成日時:2023年3月9日 23時