040 暗闇を濡らす雨。 ページ40
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雨の音がざあざあと少しだけ遠くから聞こえる。
ぼんやりとした頭で霞む視界が薄暗い部屋を映した。
俺の部屋だと認識するまでに少しだけ時間がかかった。
俺はベッドの端に体を寄り掛からせ顔を伏せた状態で眠ってしまっていたのだと気付く。
「……痛った……こんな所で寝るとか最悪」
凝った腰を擦りながらカーテンの閉まった窓へと近付く。
シャッ、と音を立てて開かれたカーテンの隙間からはいつも差し込む月の光は見えなかった。
窓ガラスには雨の滴が線を引きながら重力に従って滴り落ちていた。
そっとガラスに手を置き、額もガラスに預ける。
ひんやりとした冷たさが頭に広がっていき、少しずつ頭が冷静さを取り戻していく。
「……あの日の事を夢に見るなんてねぇ」
ゆうくんは今俺の側に居て、手が届く場所に居るのに。
あの頃みたいにゆうくんは居なくならないのに。
どうして今頃ゆうくんが消えた日の事を夢に見てしまうのだろうか。
どうしてこんなにも心が落ち着かないのだろうか。
あの頃の俺にとって、ゆうくんは小さくて、それでも俺に差し込んだ一筋の光だった。
真っ暗な夜を優しく照らす光だった。
暗い世界に沈んだ俺を引っ張り上げてくれる光だった。
俺が唯一心の底から笑える居場所だった。
雨の音は俺の心をざわつかせる。
水滴が滴り落ちる音、
雨粒が窓を叩く音、
水溜りの波紋を広げる滴
どれも全てが俺の心を不安にさせていく。
不安になる度に俺はゆうくんを失った日の事を思い出す。
ゆうくんだけじゃない、
れおくんだって俺は守れなかった。
ゆうくんの時の二の舞にならないようにずっと側で見守って居ようって。
今度こそ俺が大好きな居場所を守るんだって。
そう決めたのに、俺は今度だって何も出来なかった。
大好きな居場所は無くなって、大切な人の笑顔は消え去って、
――俺は結局弱いままで。
だから今度こそ、大切な人が居なくなる前に、
俺が誰かの光になれる様に。
きっとAだってそれを分かってくれている。
俺の幸せの為に一緒に隣を歩いてくれるAならきっと俺に力を貸してくれる。
だから俺は、もう誰も失わない為に――。
俺は雨音を背に布団の中で胎児の様に小さく丸まって目を閉じた。
雨音は少しずつ俺の世界を濡らしていく。
どうしてか目の端から小さな滴が顔を伝って落ちていった。
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とまと。(プロフ) - はるなさん» そう言って頂ける方と出会う事が出来、感無量です…!私には勿体無い言葉の数々を有難うございます、最後までお付き合いして頂けると嬉しいです。 (2017年5月9日 22時) (レス) id: 5b7907730c (このIDを非表示/違反報告)
とまと。(プロフ) - 聖泉さん» そんな嬉しい言葉を掛けて頂いたのは初めてです…!最後まで感動して頂けるように頑張ります。 (2017年5月9日 22時) (レス) id: 5b7907730c (このIDを非表示/違反報告)
はるな(プロフ) - この物語、本当に好きです!このお話と出会えて良かった!続き楽しみにしています。頑張ってください!! (2017年5月8日 23時) (レス) id: 651f5172c0 (このIDを非表示/違反報告)
聖泉 - とまと。さん» 感動しました。このお話を読んでいてよかったです(^^) (2017年5月7日 23時) (レス) id: b0c24886c2 (このIDを非表示/違反報告)
とまと。(プロフ) - 聖泉さん» まだまだ完結まで時間の掛かる2人ですがゆっくり温かい目で見てあげてください…!応援有難うございます(*^^*) (2017年4月15日 14時) (レス) id: efe978ed57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えはら | 作成日時:2016年12月7日 19時