035 これが2人の幸せ。 ページ35
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胸の奥がきゅう、と甘く締め付けられる。
だけどそれは痛みとか苦しみとかじゃなくて、ただ幸せな心地だけを感じた。
瀬名はまた私の目元に長い指を這わせて涙を拭ってくれる。
「ほーら、また泣いてる、
笑って欲しいって言ったでしょぉ?」
「……瀬名だってさっきまで泣いてたし」
何だか瀬名との距離が縮まった様に感じて、それが何処か擽ったくて、私はそれを誤魔化す為に茶化す様な言葉を口にする。
「うっさい」
瀬名は恥ずかしそうに不機嫌な表情になったと思えば、今度はまた青い瞳に真剣な色を映して私の方を見た。
「……それで?
返事は?」
そう言われて直ぐに気持ちを言葉に出来ない自身にハッとする。
……レオが消えてしまったと言うのに、私は幸せを感じても良いんだろうか。
そんな不安が過ぎるけれど、ふと瞼の裏にレオと凛月の笑った顔が浮かぶ。
もしレオや凛月なら何て言うかな。
きっと2人は優しいから、自分の事みたいに喜んで昔みたいな笑顔で
『素直になれ』
なんて言ってくれるんだろう。
――それに、何より……。
顔をあげた私の瞳に瀬名の綺麗な青い瞳が重なる。
――この人の幸せを、叶えたい。
彼を、私が幸せにしてあげたい。
そう思った瞬間、無意識に、小さな声が漏れていた。
「……好き」
ずっと言えなかった言葉。
だけどずっと伝えたかった言葉。
1度声に出してしまうと留めていた栓は簡単に決壊して想いが溢れて止まらなかった。
「――……っ、私も、瀬名が好き!」
声が震える。
手も足も緊張で冷たくなって、震えていた。
瀬名は薄く頬を染め、そっぽを向きながら小さく呟く。
「……瀬名、じゃなくて……泉って呼んで」
その言葉を聞いた途端、私は何となく、心の何処かで確信した。
私達はお互い気持ちが通じている。
私は瀬名の隣で歩けるんだ。
瀬名の大切な女の子になれたんだ、って。
照れた瀬名の横顔が可愛くて、思わず笑みが溢れた。
「泉、好きだよ
私の隣でずっと笑っててね」
私は想いが全部伝わる様に、溢れる気持ちを言葉に込めた。
瀬名は……泉はまだ少し照れていたけれどそれでも笑ってくれた。
「……あ〜〜〜……
幸せ過ぎるかも……」
この時は私達は確かに幸せを噛み締めていたはずだったのだ。
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とまと。(プロフ) - はるなさん» そう言って頂ける方と出会う事が出来、感無量です…!私には勿体無い言葉の数々を有難うございます、最後までお付き合いして頂けると嬉しいです。 (2017年5月9日 22時) (レス) id: 5b7907730c (このIDを非表示/違反報告)
とまと。(プロフ) - 聖泉さん» そんな嬉しい言葉を掛けて頂いたのは初めてです…!最後まで感動して頂けるように頑張ります。 (2017年5月9日 22時) (レス) id: 5b7907730c (このIDを非表示/違反報告)
はるな(プロフ) - この物語、本当に好きです!このお話と出会えて良かった!続き楽しみにしています。頑張ってください!! (2017年5月8日 23時) (レス) id: 651f5172c0 (このIDを非表示/違反報告)
聖泉 - とまと。さん» 感動しました。このお話を読んでいてよかったです(^^) (2017年5月7日 23時) (レス) id: b0c24886c2 (このIDを非表示/違反報告)
とまと。(プロフ) - 聖泉さん» まだまだ完結まで時間の掛かる2人ですがゆっくり温かい目で見てあげてください…!応援有難うございます(*^^*) (2017年4月15日 14時) (レス) id: efe978ed57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えはら | 作成日時:2016年12月7日 19時