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011 始まりのひと言。 ページ11

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その光景を目にした途端、私の顔から笑顔なんて消え去って、



最後に残ったものは苦痛の表情だった。





『皇帝』との初めての戦いを終え、控え室に戻った途端、



ダンッ!とレオが強く壁を殴った。





「クッソ……」



悔しそうに俯いた口から零れたのはそれだけ。




『皇帝』との戦いの結果は惨敗だった。





「……想像以上の力だったね」




あの凛月でさえも苦痛の色が窺える様な顔色だった。





「……」



瀬名はこの現実を受け入れられないのか、


ただ、ぼんやり突っ立っていた。





「……なぁ」




重たく沈んだ室内の雰囲気を変えたのはレオのこのひと言からだった。





「……もう1回『皇帝』と戦わないか?」




そのひと言で私を含めた3人は思わず顔を上げた。





私の目に映ったレオの表情には



悔しさよりも野心を抱いた様な熱が篭っていて、



思わずぞわりと体が震えた。





「……俺も、負けっぱなしなんて嫌だからね、



勿論そのつもり」




凛月も負けず嫌いなのか、好戦的な色を見せた。





「……ん、」




だけど。




瀬名の目にはいつもみたいな強気な色は映し出されていなくて、



そこにあったのは迷いや不安の様な暗い色だった。





結局Knightsは再び『皇帝』と戦う事になり、


レオはいつも以上に作曲に力を費やす様になった。









いつも通りの帰り道。




暗い道を2人並んで歩く。




今日の瀬名は静かで、心ここに在らず、の様で心配だった。




やっぱり負けたのが悔しかったのかな。





今までだってKnightsにも負けた経験はある。





だけど今回は異色で、本当に惨敗、ただそれだけだった。





「……ね」




いつかの様に瀬名が口を開く。





「……本当にこれで良いのかな



『皇帝』とまた戦うのは良いんだけど……」





瀬名は言葉を続けようとするけれど、



上手く言えないのか、もごもごと口ごもってしまう。





多分、瀬名の中にある漠然とした不安を言葉に出来ないんだと思う。






プロデューサーである私が今貴方の為にしてあげられる事は、


きっとその不安を少しでも和らげてあげる事。





「大丈夫、


レオがKnightsは負けないって言った事、


私達が信じよう?」





その言葉に瀬名は少しだけ顔を緩めてただ微笑むだけだった。









この日、私が再戦する事を止めていれば良かったと、



今でもそう思う。





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とまと。(プロフ) - はるなさん» そう言って頂ける方と出会う事が出来、感無量です…!私には勿体無い言葉の数々を有難うございます、最後までお付き合いして頂けると嬉しいです。 (2017年5月9日 22時) (レス) id: 5b7907730c (このIDを非表示/違反報告)
とまと。(プロフ) - 聖泉さん» そんな嬉しい言葉を掛けて頂いたのは初めてです…!最後まで感動して頂けるように頑張ります。 (2017年5月9日 22時) (レス) id: 5b7907730c (このIDを非表示/違反報告)
はるな(プロフ) - この物語、本当に好きです!このお話と出会えて良かった!続き楽しみにしています。頑張ってください!! (2017年5月8日 23時) (レス) id: 651f5172c0 (このIDを非表示/違反報告)
聖泉 - とまと。さん» 感動しました。このお話を読んでいてよかったです(^^) (2017年5月7日 23時) (レス) id: b0c24886c2 (このIDを非表示/違反報告)
とまと。(プロフ) - 聖泉さん» まだまだ完結まで時間の掛かる2人ですがゆっくり温かい目で見てあげてください…!応援有難うございます(*^^*) (2017年4月15日 14時) (レス) id: efe978ed57 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えはら | 作成日時:2016年12月7日 19時

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