52話 ページ3
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「えー、もう時間?」
エリス嬢は少し不満気だけれど約束は約束。
森さんに至っては、またやられてしまったね、と笑う。
「君の強かさには感服するよ。」
「お褒め頂きありがとうございます。…では、失礼します。」
自身の紅茶代としてお札を一枚、テーブルに置いて立ち上がり、一礼して背を向けた。
店を出て少し移動した処で携帯の電話帳を開く。
た行で検索して一人に電話をかける。
1コールで出る辺り、また仕事をサボっているのだろう。
『もしもーし!どったのかな〜?』
「…治っ。」
『え、Aちゃん?どうしたの?』
「…来て。」
そう云うと、太宰は慌てたように場所の確認をし、私は川が見えるベンチで川の流れを見ていた。
「お嬢さん、お隣宜しいでしょうか。。」
「ええ。」
とすん、と私の隣に腰を落とす男は私の肩に腕を回して頭を自身の方へと傾けるその手は優しく私の頭を撫でる。
「何があったんだい。」
「…森さんに会ったの。」
「……大丈夫だった?」
「少し、怖かった…。でも、謝りたいって頭を下げられて、訳が分からなくなった。」
目を閉じて太宰の温もりを服越しに感じていると、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
「治、いつもありがとう…。」
「Aちゃんの為なら。」
そして私達は暫くこのままの状態でただじっと川を眺めてた。
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作者名:汎用うさぎ | 作成日時:2023年4月25日 22時