63話 ページ14
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「どうしたのじゃ中也。部下から最近の主は機嫌が悪いと話が出回っておる。」
「姐さん…。まあ、色々ありまして。」
俺が酔いつぶれて三上の家で寝泊まりした日の翌々日。
書類の片付けをしている際、そんな事を姐さんに指摘されて、何故苛ついているのか聞かれる。
正直、何故自分がこんなに苛ついているのかは分からない。
「話してみよ。」
「……。」
いや、本当は少しくらいなら分かってる。
三上の顔が目の前にあったのをきっかけに少しずつ思い出したが、確かに俺はあいつに煙を吹きかけた挙げ句にキス、をした…。
前後の会話は覚えてはいないが。
其れなのにいつもと変わらない三上に無性に腹が立っていた。
「三上って、どんな奴なんすか…。」
「A?中也の口から女の名前が出るなど珍しい事もあったものじゃ。そうじゃのぅ、Aは愛い子じゃ。」
「そういう事ではなくて、その、好きな物とか…。」
そう俺が尋ねると姐さんは一歩引いて、着物の袖で口元を隠す。驚いたという表情をして。
「…惚れたか?」
「断じてありえません!!」
「そうさのう…Aはああ見えて菓子が好きじゃ。甘い物、洋菓子や和菓子はよく食べておった。」
何があったのじゃ、と詮索してくる姐さんに観念してキスを省く経緯を話せば、成る程のうと納得。
そういう事ならと以前姐さんが捕虜として捕まっていた時、三上が気になると云っていたカフェを幾つか教えてくれた。
善は急げじゃ、と急かす姐さんの前で携帯を開いた。
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作者名:汎用うさぎ | 作成日時:2023年4月25日 22時