聖母が2人 ページ4
扉を開けて教室を見渡すとそこには僕が不登校になる前から仲良くしてくれていた友人達がいて。
たった1年会わなかっただけなのに皆の顔を見るのがなんだか懐かしく思えてくる。
「A？ Aなの？」
なにかの物を落とした音がした後によく僕の事を気にかけてくれていたモデル仲間だった彼の声が耳に入った。
すると、騒がしかった教室は水を打ったように静まり、僕の方を見る。皆の顔を見ると驚いた様な表情をしていて。それがなんだかおかしく思えてくる。
そして次の瞬間ーー
ーー泉が僕に抱きついてきた。
思わずよろけそうになるのを堪えて泉を受け止める。そして彼の頭を優しく撫でた。
「……ただいま。何も言わずに消えちゃってごめんね。でも、もう大丈夫だから」
あの日泉に、いや、泉だけじゃない。ほかの皆にも何も言わずに僕は夢ノ咲に来なくなった。
何があったのか、そんな説明も一言もすることなくただ月日が流れていっていた。
だからこそ僕は彼等に謝りたかったんだ。何も言わずに不登校になってしまったことを。大切な仲間を守り、救えなかった事を。
しばらくの間沈黙が続き、泉が顔を上げて言った。
「A。俺達はあんたに謝られたい訳じゃない。あんたがあの時必死でレオ君や五奇人達を守ろうとしていたのを知ってるからねぇ。
……だから、『ごめん』なんて言わなくていい。『ただいま』だけでいいんだよ」
そう言って優しく笑いかけてくれた泉の目は少し涙目になっていて。無理をさせてしまったという罪悪感が湧いた。でも、それと同時になんだか嬉しい自分もいた。
僕の居場所はここなんだって改めて思えたから。
「ほら、もう1回言って？
今度は『ごめん』なんて言わずに、［ただいま］だけでいいんだからね？」
泉はそう言うなりじっと僕を見つめる。
他の皆もじっと僕を見つめていて。そんな光景に思わず苦笑しつつ、言った。
「ただいま。皆」
おかえりなさい。そんな声が教室に響いた。
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クロりんご(プロフ) - 夕霧さん» コメントありがとうございます！はい！頑張ります！ (2018年8月7日 17時) (
レス) id: 738c9471c2 (このIDを非表示/違反報告)
夕霧 - とても面白かったです！これからも更新頑張って下さい！ (2018年8月7日 17時) (レス) id: 8fe2495ae6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：クロりんご
| 作成日時：2018年5月15日 21時
