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「もしもし…あーウン、了解。すぐ向かう」
電話に出れば、Aの部下からの連絡だった。潜入する準備がほとんど整ったから確認して欲しいとの事だった。
「春ちゃん」
「ヘマするなよ」
「勿論、俺を誰だと思ってんの」
名残惜しくも向かわなければならない事に、寂しさを感じつつも首領の為、梵天の為となればやらねばならないので重い腰をあげるように春千夜の部屋を出る。
「痛い…」
自室を目指すべく廊下を歩くAだったが、腰の痛さにその場に蹲った。春千夜との行為はいつも容赦ないので、足腰がしんどくなるのは何時のもの事だった。
「A?」
「…ココ」
「…バカお前下着ろ」
目の前に影を落とし、Aの名前を呼んだのは九井一だった。Aはココと愛称で呼ぶ数少ない人間の1人だった。
差し出された手に捕まり腰をあげて、立つAを一瞥した九井はその姿に吃驚する。どうせ春千夜に連れられてやってきたのだという事はなんとなく察した。
「ありがと、俺この後仕事なんだけど腰死ぬ」
「…オマエもオマエだ。」
「ハイ」
誘ったのはどうせコイツであることを九井は分かっているからこそのお咎めだった。
「潜入か?」
「そう」
「頑張れよ、」
「…ん、っ」
そう言ってAの頬に手を擦り寄せ、唇にキスをする九井。
「ココ…」
「続きはオマエの仕事が終わったらな」
「はぁい」
その言葉だけで俄然やる気が出たAは、九井に手を振って別れた。
自室に無事到着し、クローゼットから真新しいスーツに腕を通す。いつも来ているオーダーメイドスーツとは別で、Aにとってみれば安い部類に入る20万円程度のビジネススーツを着用した。
ネクタイとネクタイピンを着け、ワックスで髪を整えて鏡を再度見つめる。
「完璧」
革靴を履き、自室を出て向かうのはまずマイキーの元。寝ていたらこっそり出よう。という算段の元、マイキーの寝室へ向かった。
両開きのドアを小さく手の甲で鳴らしたが、反応がない。ドアの開く音を最小限にして、真ん中にポツンと置かれたキングサイズのベッドに向かった。
そこには珍しくすやすや丸まって眠るマイキーの姿が。梵天の首領がこんなに可愛い姿で寝ていると知ったら一般人はどう思うだろうか。
Aは起こさないように、行ってきます、と小さく声を掛けて、扉の方へ足を向けた。
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綾人 - 21.22話ぐらいの時に綾辻くんの名前を綾人で設定していたので、なにがなんだか分からなくなってしまってカオスで面白い状況になっていて笑いました!こういう小説がずっと読みたかったので嬉しいです。これからも無理せず頑張ってください! (7月27日 21時) (レス) id: 37a56df5f0 (このIDを非表示/違反報告)
Noah(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます。この作品に出会ってくれて本当に嬉しいです。私も綾辻くんには思い入れがあるのでこれからぜひ推してあげてください (2023年2月27日 1時) (レス) id: 4cbd1f8990 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - 初コメント失礼します。綾辻くん本当に可愛くていつの間にか、推しになっていた、とっても面白い作品でした!完結する前に出会えなかったこと、とても悔しいです。この作品を作って、残していただきありがとうございました! (2023年2月19日 11時) (レス) @page47 id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
Noah(プロフ) - あ。さん» そうです!18禁じゃないリクエストもお受けしております〜! (2022年4月17日 11時) (レス) id: 47f23e3d75 (このIDを非表示/違反報告)
あ。(プロフ) - 短編集ってR18のほうですか?いつも面白いです! (2022年4月17日 8時) (レス) id: 976bfd9362 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Noah | 作成日時:2021年10月25日 15時