ヒツジと狼スピンオフ #tokyo-revengers (ページ10)

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夢③ ページ10

Side 春千夜

俺らが、どんな気持ちでこいつを守ってきたのか
巻き込みたくなくて、怖がらせたくなくて、傷つけたくなくて

でも、そばにいてェのはずっとそうで

俺が、どんな気持ちで
一度、こいつの手を離したのか

分かるはずねェとは思いながらも、
大事に大切にしまってたモン、土足で踏みにじられたような気持ちだった。

「…後悔したか？」

「…」

「お前が思ってた100倍、地獄みてェな世界だろ」

あの後、イライラして仕方がなかった俺は
担いでいたAを迎えの車に押し込めて

『お前らは第3アジトへ向かえ。別件だ』

そう、伝えて灰谷共に連絡を入れた。

『なんだよ今仕事中だっつの～』

『お前んとこの部下がやらかしてんだよ尻拭いしろや』

『あ？』

『脅して見せつけてんだよ、スクラップ』

『…』

『どうにかしろ』

『Aちゃんは』

『保護した。俺はアジトに戻るからお前らは第3アジト行け』

『竜胆が終わったら向かう』

車の後部座席、俺の隣に座るA

放心状態で手足がガクガク震えてた
その顔には、きったねェ血がべっとりついて

俺はそれに嫌悪を感じて、服の袖でゴシゴシ拭う。

『A』

『…』

『こっち向けや』

無理やりこちらを向かせた顔
まるで何も映していないようなその目に、心臓がえぐられたような

そんな気分だった。

「…後悔はしてない。離れてたときのほうがたくさんした」

「…」

「…でもなかなか、消えてくれなくて。血の匂いも感触も、温度も。消えそうな声もぜんぶ」

「…」

「…ごめん」

「なに」

「ここにいるならそんなこと言ってられないよね。そのうち寝られると思う。だから私のことは大丈夫だよ」

腹が立つ

そんな光景を見せたこと、脳裏に焼き付かせたこと
それがきっかけでもうずっと満足に眠れてねェこと

この期に及んで「大丈夫」だのぬかしたこと言うのも

俺が何のためにその手を離して
どんな覚悟でまたそばに置いているのか

分かんねェならそれでいい
別に知らねェままでいい

でも、

「…オイ」

「ん」

「…俺がいンだから怖いもんなんてねェだろ」

「…」

「お前が怖いと思うモンも苦しいと思うモンも、俺がぜんぶこの世から消してやるから」

「…ん」

「…だから、慣れンな。大丈夫とか言うな」

「…」

「そんままでいいっつったろ」

何度も、何度も。