ヒツジと狼スピンオフ #tokyo-revengers (ページ11)

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夢④ ページ11

Side 竜胆

『…は？』

『なに、聞こえなかった？』

『いや…』

『さっさと向かおうぜ。どうせそいつ大した情報持ってねぇだろ。時間の無駄』

『ん』

兄ちゃんにそう言われて、妻がどうだの子どもがどうだの
長ったらしく命乞いをしていたそいつの頭に向かって、躊躇することなく引き金を引く。

後片付けを任せるための連絡を入れて、迎えの車に2人で乗って

『…んで、どゆこと？』

『だから～、俺らが持ち場離れてから、俺らの部下がAちゃん脅してスクラップ見せたんだって』

『なんで』

『知らね』

『Aは』

『三途が保護した』

『…そう』

『なあ竜胆』

『ん』

『殺そっか』

ニコリ、と笑う兄ちゃん
この笑顔を前に、今までどれだけの人間が震え上がったのか

助けてもらえると勘違いしたバカもいたけど

それ以外の会話はなかった

俺はずっと、Aのことが気がかりで

第一なんで上司の許可なく発砲してんだよ
スクラップ案件はだいたいが幹部の仕事だ
なんでよりによって、

なんで俺Aから離れた？

『おー、集まってんなあ。でもお前らほとんど用ねぇよ』

俺らが普段過ごしているアジトとは別のアジト

そこに足を踏み入れると、俺らの空気を察したのか
震え上がる奴が大勢、でも

『…お前か』

『蘭さん竜胆さん！別件てどんな仕事ですか？』

正義感

どうでもいい

『こっち来い』

『え？』

何の戸惑いもなく、一歩俺らに近づいたその身体
みぞおち目掛けて蹴り上げる

うずくまる身体
訳が分からない、というような顔目掛けて拳を振るう

何度蹴ったか殴ったか、あーまた革靴修理出さねぇと。

『竜胆マジギレじゃんウケる』

ポケットに手を入れて壁に寄り掛かっていた兄ちゃんがまた笑う

『誰だ～？上司の許可なく発砲したやつは』

『…』

『見過ごしたお前らも責任あんぞ。何知らねぇ顔してんだ？』

血濡れた拳
転がる歯
関節が逆を向いた身体

何も感じなかった

『俺ら言ったよな、あの子責任もって仕事終わるまで守れって』

脳裏に浮かぶのは、俺らが逮捕されるのを知って
ボロボロと泣き出したAの顔

『…頭悪ィな。聞けねぇ耳はいらねぇだろ』

鋭い視線
手を突っ込んでいたポケットからナイフを取り出した兄ちゃんが、横に並ぶ。