ヒツジと狼スピンオフ #tokyo-revengers (ページ2)

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となり② ページ2

今度はゆっくりと伸びる手
私の頬をそっと撫でて、涙の痕をなぞる

「…ぶっさ」

「は？」

「それしか言わねぇな」

「誰のせい」

ムカついて、春千夜の手を払いのけようとすると
今度はその手をゆるくつかまれる

隙間のないふたりの間で

「…お前が中学入学して、浮かれて部活入って」

「…」

「想像してたのと違ぇ、って半泣きなってた頃からずっと」

「…」

「理不尽な顧問とか面倒くせぇ先輩だとか、嫌み言ってくる友だちにもみくちゃにされて壊れかけて、学校行きたくねぇって電話してきたり」

…懐かしい
あったな、そんなこと。

「…捻挫して歩けねぇのに、誰にも頼れねぇせいで夜まで学校残ったり」

大事にされたくなかった
だからせめて校内の生徒がいなくなってから、帰ろうって

そしたら春千夜が迎えに来てくれて
私はなんだかそれまで張りつめていた糸が簡単に切れて、泣いて

泣き止むのを待ってくれた春千夜が、おんぶして家まで送ってくれたんだ。

照れくさくてへらり、と笑うと
「笑ってんなよしばくぞ」と怒られた。こわい。

「…よかったんじゃねぇの」

「ん…？」

「この3年間の部活」

「…」

「…俺にはそう見えた」

苦しかったこともあったし
しんどいと思ったこともあったし
やめたいって、何度思ったか分からない

でも

「…たのしかった」

「…おー」

「…春千夜」

「なに」

「ありがと」

「改めて言うなよ気色悪ィ」

「返せ私の感謝」

「無理でーす」

春千夜が立つ
その拍子に、握られていた手を引っ張られて私も立ち上がる

スッキリした

泣いたから
振り返ったから
文句を唱えたから

春千夜が、肯定してくれたから

「腹減った」

「私も。どっか寄る？」

「顧問に怒られるっつってたの誰だ？」

「引退したもん」

「あっそ」

「引退祝いにファミレス寄ろう」

「調子乗んな。てか俺金持ってねぇ」

「…私も」

「奢られようとしてんじゃねぇよ帰んぞバカ」

「口悪」